内容説明
伊豆に流されて21年、ようやく決起の時は来た。石橋山の旗揚げに敗れて安房へ逃れた頼朝だが、たちまち大軍を呼集して鎌倉に入った。源平の雌雄を決する富士川の合戦は、水鳥の羽音に怯えて平家敗走。やがて清盛も死に、木曽義仲が京を占領。義経の軍は義仲、平家を滅ぼし、鎌倉時代の幕があける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
氷柱
4
667作目。1月21日から。義経が敵になる手前で終わる。つまり頼朝が悪役になりきる直前で作品が終了する。1巻や2巻と比べると展開の速さが桁違いだが、それでも勢力図が動くテンポは鮮やかなものであり、今作はドロドロした人間ドラマから勢力図争いへと変貌した最終巻となっていた。勢力図が肝心になる構成であった為、他の巻よりも血縁関係やこれまでの関係の描写に一層力が入っていたように見える。特に義仲と頼朝の関係や対比が非常にわかりやすく描かれていた。2021/01/23
新父帰る
4
鹿ケ谷事件の処分から朝日将軍木曾義仲の討死までの話。著者は、義経の平家追討と滅亡を扱わなかった弁として、義経の活躍した小説は、既にたくさんあるとしている。実はこの第3巻には頼朝の命に背いた場合の、厳しい処置についてくどくど書いてあり、この厳命に対する義経の軽率さを暗にほのめかして、頼朝の義をクローズアップしているように思えた。義経人気はさることながら、頼朝は武士の棟梁としての秩序ある武家社会のシステムを構築すべく、義経にも例外なく適用していったことを言いたかったのではないか。この点特に異論はない。2017/03/23
万次郎
3
中途半端な感が否めない。壇ノ浦の戦い、義経追討、鎌倉幕府を開く等、まだ書ける山はたくさんあるのに、義仲の討死で終わっている。もう少し書いて欲しかった。「追討された安徳天皇や義経に、日本人の人情が集まるから」という理由は、当たらない。2012/08/28
ひで
2
山岡荘八著「源頼朝」の第3巻完結編。頼朝34才から38才までが描かれていた。58年の生涯よりも随分はやめに(木曽義仲が討ち死にするところまでで)描き切られていた。正直、それ以降(平家討伐から義経との確執など)が知りたかったが、最後の筆者の解説を読み納得。13才で都落ちした頼朝が21年の歳月を経て武家の棟梁として動きだす。揺れ動く院政に舵取りも慎重になってくる。やはり義経や義仲とは違い、先を見る政治家タイプのように感じられた。続きは何か別の本で触れてみたい。2022/05/05
水戸
2
最後の作者の語りを読んで「あー、だから、こんな書き方でここまでなのか! なるほど」でした。頼朝の生涯を描くには短いのではと思ったけど、この後の彼と彼を取り巻く命運の心理的基盤を残して、あとはそれぞれに思いを馳せて歴史を噛み締めてってことなんですね。うわぁ……なるほど。頼朝の非情とも言える、やるせない決断などの理由は、ここにあるんですって部分と、それがあるのにこうなったんですって先の歴史をうかがわせる部分で終幕とは……なんて手法……すごい。そして私の解釈が類似してたので、あーやはりそうよねぇ、てなりました2017/06/10