内容説明
「俺ばこの町で一番頭が悪く、なんのコネやツテもなく、やる気も金もないクソみたいな道具屋だ」。伝説のテキストサイト運営人にして破格の経歴をもつ古道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた痛快“冒険”私小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
masa
44
BPMの高い暴言に確かな温もりを感じる。その正体が知りたくてのめり込むように読んだ。そこに在ったのは、偽りのなさだ。誰もが、自分を騙して生きている。多くの場合、そのことに無自覚で気がつくことすらなかったり、気がついたとしても仕方がないことだと諦めている。そうしなければ、この世を生き抜くことなどできないと。だけど誰もお前のことなど知りたくもない。社会は個を蔑ろにする。ありのままの他人に干渉しない代わりに、自分のルールで生きればいい。著者の自分にだけは嘘をつかない生き様に、魂の咆哮に、きっと救われる人がいる。2023/12/09
Y2K☮
33
著者初読み。かつてテキストサイトを運営していたとか。「侍魂」と「斬鉄剣」を思い出した。私小説らしいから語り手は本人。買い取り専門の道具屋? 口と態度は悪いがカネの話は正直で、困っている依頼人にどうすればベターかを教える。オースター「ムーン・パレス」の主人公へ重ねつつ、藤原伊織「テロリストのパラソル」の島村が転生した姿にも見える。ただ決定的な違い。この人は実在する。令和の日本で生きている。おそらく。いつ死んでもいいから生命保険に入っているみたいな理屈に、個の倫理と家庭を持つ者の責任の危うい共存を見たような。2026/03/11
くさてる
23
Twitterでの語りが面白くフォローしていたけれど、あの「スヰス」の人だと知って驚愕。読んでた!書籍で読みたいなと思っていたので、この本は嬉しい。内容は、ハードボイルドで破滅的で、でもどこかユーモアがある古道具の買取の業務日誌に漂う死の匂い。濃厚な内容だけど、胸やけせずに読める巧さで、もっと読みたい。お勧めです。2023/10/19
zirou1984
13
無頼で無骨な文章はどうしてもこうも面白いのか。否、無頼で無骨に振る舞おうとも、己の倫理に正直すぎるあまりに日常を疑問符だらけで過ごさずにはいられない文章とはどうしてこうも面白いのか。矢鱈と口の悪さを自称しながらも、悪態の裏にある思考や理念をこうも明け透けに描かれてしまうとそこに惹かれずにはいられない。俺はクソな人間だ、だから俺自身よりも大切なものはあるという価値観の元から出てくる倫理は美しいし、性根が歪んでない人間の悪態には魅力がある。言葉には、泥を花に変えてしまう魔法がある2024/01/08
春が来た
8
時々、自分の正義を絶対に疑わず、悪気のない(と信じたい)圧をかけてくるという場面に出くわすことがある。そうでしか自分を守れないんだと思い、当たり障りのない態度で接してみる。けどモヤモヤは残る。そんな時に読んでみた。思いがけず腑に落ちる言葉に出会う。私が感じた圧も、私のそっけなさも各々が生きてくための自分のやり方だった。それだけだった。私モヤモヤは、共有できないって所だったのかも。著者のダークヒーロー的な生き様。結局のところ、どれだけ悪態ついたって真っ直ぐな人間愛が根っこにある人。だから受け入れられる。2026/05/16
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