内容説明
本書から照らし出す近代の“闇”と“沈黙”とは、抑圧や隠蔽といった耳慣れた事態から生じたものではない。すぐそこにありながら、そうと意識する機会さえ奪われたまま、傍らに遠ざけたものである。言説の配置やイメージのステロタイプ化によって封印されてきた“闇”と“沈黙”の領域にいま、現代の時空に向けていっせいに光を投げかけ、先鋭的な多くの課題の所在を浮上させる。
目次
1 「沈黙」という主題系(言葉と身体―多和田葉子『聖女伝説』『飛魂』を通して;「探偵小説」が隠蔽するもの―黒岩涙香『無惨』から内田魯庵訳『罪と罰』へ;“美術”と裸体画をめぐる係争―雑誌における裸体画論争・第二幕と“民衆”;色彩の言葉、線の意味―小林秀雄『近代絵画』 ほか)
2 闇/近代の諸相(静かにしなさい、さもないと…―明治一〇年代の都市民権派と演説会;王妃の行方―暗殺事件前後における閔妃の表象;「文」と「近代」―夏目漱石の『文学論』の位相;“国民の声”としての民謡 ほか)