内容説明
壮麗無比なピンチョン文学の世界に挑む、冒険的/挑発的/独創的な作品論、ここに登場。
目次
はじめに ピンチョンの動物園へようこそ
第1部 『V.』から『重力の虹』まで(鰐とアメーバ;境界線上のイルカ;巨大蛸は咆えない)
第2部 『ヴァインライド』から『インヒアレント・ヴァイス』まで(すべての豚どもに死を;犬たちの沈黙;タッツェルヴルムが叫ぶとき)
おわりに ビッグフットはここにいる
著者等紹介
波戸岡景太[ハトオカケイタ]
1977年、神奈川県に生まれる。慶應義塾大学大学院後期博士課程修了、博士(文学)。ネヴァダ大学リノ校客員研究員を経て、明治大学理工学部総合文化教室准教授。専攻、アメリカ文学、文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
100
たしかに、動物が色々と出てくる。ピンチョン作品。再読中の『重力の虹』には、アメーバや豚が。こういう解説本も読むほどに、ピンチョンはジョージ•オーウェルを読み込んでいたように思えてならない2021/04/13
Vakira
33
「重力の虹」を読み、ピンチョンは6作読了。読友さんの感想よりこの本の存在を知る。「重力の虹」は「V.」に輪をかけてシリアス&コミックだったのでかなり気になり購入してしまった。波戸岡さんの解釈本、かなりマニアックというか独創的。自分が気付かなかったものだからこじつけ感もあり、そこまで深読み出来ません。まぁ 一つの解釈として・・・ 文章の引用が多々有り、思い出して楽しみました。何故動物園なのか?初っ端に「軍用気球を見る猿たち」というフォトジャーナリストのサシツキーの撮った写真。 2017/10/17
抹茶モナカ
13
ピンチョンを読める中年になりたくて、手に取った。ピンチョンの作品群を前半戦と後半戦に分け、それぞれでの動物の扱われ方を見て行く書評。学位論文を加筆修正した本のようなので、ピンチョン作品は未読だけど、信頼できそう。書評からして、難読だ。むむ~。2014/11/05
メセニ
12
一枚の写真がある。戦時下のロンドン動物園内の猿山から空に向けてシャッターを切ったものだ。そこには軍用気球を見る猿たちが写されている。これが本書の出発点である。写真の中には人間の姿こそないが、著者は「気球を見る猿を見る私たち」という構図を見て取る。ここにおいて我々人間は、猿を間にし、気球を浮かべた「私たち」とそれを眺める「私たち」に分裂しているのだという。そしてそれは常に同時的な存在であると。人間が人間を他者化するためにハーフミラーとして機能する動物。著者はこの視座に立ってピンチョン作品にアプローチする。2017/10/08
Ecriture
11
最新の『インヒアレント・ヴァイス』論まで入ったピンチョン論集。「動物」をキーワードにピンチョンの足跡を辿っていく試み。「動物園化するポストモダン」なる文字が踊り、勿論東浩紀の『動物化するポストモダン』が頭をよぎったが、全く無関係であった。読みやすいので4~5時間で通読できる。踏み込んでテーマ分析を行うので、ピンチョンの作品ガイドとして使いたい人には木原さんの本の方がオススメですが。2011/09/21