内容説明
江戸の名残をとどめ、物売りの声が遠く響く世界都市に、実用と享楽の音塊が押し寄せた!爾来人びとに憑きまくる“わたくし”という感覚とは?“静寂”とは?自他をわける“やかましい”の実相とは?―無数のメディアに表出した庶民の織りなす音風景の小譚を、ヨーロッパ思想の援用を踏まえて縦横無尽に博捜するノイズ三都物語「東京篇」!!収載図版95点。
目次
第1章 都市の周縁の音世界
第2章 寺の鐘と教会の鐘の政治学
第3章 太鼓と木魚の社会秩序
第4章 拍子木と自由の観念
第5章 精神という神話とモダンタイムズ
第6章 プライバシーの音響学
第7章 騒音と静寂の権力論
第8章 都市の交響楽
第9章 サイレンと国家イデオロギー
第10章 ラジオと時代の尖端性
著者等紹介
原克[ハラカツミ]
1954年生まれ。立教大学文学部独文科卒、同大学院文学研究科博士課程中退、神戸大学国際文化学部助教授、立教大学文学部助教授・教授、ベルリン・フンボルト大学客員教授を経て現・早稲田大学教育学部教授(表象文化論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆうちゃん
2
騒音は機械登場による文明化とともに現れた。騒音を抑える科学と騒音による被害防止のための法学の進歩など、騒音の歴史はコウハンイニ亘って深く、今後も時代の変化に応じて議論を要する人類の指標。2022/05/29
古本虫がさまよう
1
参考文献や註釈などが多々ある学術的雰囲気のある本。「騒音の歴史を通して日本の近代をあぶりだす」ことを狙って書いたとのこと。「静寂と騒音のせめぎあいというものは音の権力闘争なのである」との指摘も。国会周辺での、かつての60年安保闘争や安保関連法案の反対デモは「騒音デモ」というか、わざと大きな声やらを出してアピールするものだったともいえるかもしれない。『三四郎』 (夏目漱石)に出てくる熊本から上京してきた三四郎が、東京の電車はちんちんなるのに「うるさいよりもすさまじいくらいである」と述懐するところから始まる。2020/04/05