内容説明
かつて日本の文壇を揺るがした「パステルナーク事件」という騒動があった。それは1958年度ノーベル文学賞がソ連の作家パステルナークに授与されたとの一報から始まった。それから60年。日本の文学者・知識人たちが無自覚のうちに巻き込まれた、この忘れられた“狂騒曲”の真実に、初めて本書が迫る。
目次
発端―一九五八年十月二十三日
祝福から迫害へ―一九五八年十月二十三日~十一月六日
「事件」前史―一九五六~五八年
日本語版『ドクトル・ジバゴ』狂騒曲
糾弾者エドワード・サイデンステッカー
「文士」と政治―高見順(1)
「怖れ」と「美化」と―高見順(2)
「モスクワ芸術座」という事件
“害虫”のポリティクス
“ワルプルギスの夜”の闇
『真昼の暗黒』の来日―アーサー・ケストラー1
「目に見えぬ文字」への道程―アーサー・ケストラー2
“勝利”の儀式?―第3回ソビエト作家大会1
クレムリン宮殿の中野重治―第3回ソビエト作家大会2
「事件」の終わり―かくて人びとは去り…
著者等紹介
陶山幾朗[スヤマイクロウ]
1940年生まれ。1965年早稲田大学第一文学部卒。雑誌『VAV』同人。2018年11月2日急逝(78歳)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shun'ichiro AKIKUSA
2
著名な編集者の絶筆。この本のうちあわせのために東京にでてくる約束をしていたが、やってこず、問い合わせたところ亡くなっていたとのこと。内容はパステルナークのノーベル賞受賞後の日本の文壇の反応が中心。外国の文献は一切使われていないが、その分当時の文献は丁寧に渉猟されているのでその点資料価値が高い。脱線が多いのと、やや外連味のある語り口は人を選ぶかも。2019/12/20
Fumihiko Kimura
0
パステルナーク事件を巡る知識人の悲喜こもごも。良質な映画を観た後の如き不思議な満足感。良書。2020/04/13