内容説明
日本による台湾の植民地支配がはじまって十五年、台北の街に江文也は生まれた。六歳で家族とともに廈門に渡り、十三歳で日本に進学。旧制中学卒業後は東京に暮らし、作曲家としての才能を開花させた。1936年には日本人としてベルリン・オリンピック音楽賞を受賞。戦時中には日本軍のプロパガンダ映画の音楽監督としても重用された。1938年、軍部の命令で北京師範学院の教授となり、以降は活動の拠点を中国に移して数多くの文化人と交流を持った。しかし戦後、中国に留まるも、漢奸と見なされ、さらに反右派闘争、文化大革命と歴史の荒波に翻弄されてゆく。声楽家、作曲家、詩人、研究者といった肩書にしばられない才能豊かな芸術家であり、逆境のなかでも音楽への情熱を抱き続けた彼の波乱万丈の生涯をたどる。
目次
序曲 巨星、頭角を現す―オリンピック音楽賞についての調査報告
第1楽章 台湾編―植民地の家族
第2楽章 廈門編―廈門の少年詩人
第3楽章 日本編―学業、結婚、成功
第4楽章 中国編―皇民、教授、文革
余韻 故郷の人々の思い
著者等紹介
劉美蓮[リュウビレン]
台湾師範大学音楽系卒業。これまでに屏東師範専科学校、台南家政専科学校、国立台湾芸術専科学校で教鞭を執る。中華民国教育部審定の小学生向け音楽教科書の編集も担当。社団法人中華音楽著作権協会理事・顧問。中華圏のグラミー賞とも呼ばれる音楽賞の「金曲奨」や、台湾のエミー賞とも呼ばれる放送文化賞「金鐘奨」の審査委員を数期に渡って務める。「歌についての探偵調査」をライフワークとして勤しんでいる
西村正男[ニシムラマサオ]
関西学院大学社会学部・大学院言語コミュニケーション文化研究科教授。専門は中国語圏の文学・メディア文化史
廣瀬光沙[ヒロセミサ]
中日翻訳者。広島大学大学院総合科学研究科博士課程前期修了。台湾の歌手・鳳飛飛を研究。映像字幕やゲーム作品のほか、台湾文学館常設展の翻訳などを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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