感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
23
上川涼子さんの第一歌集。2025年8月刊。上川さんは1988年生まれの福岡県福岡市のご出身。水をモチーフにした作品の多い、透明な抒情と自由を希求する静かな詩情が透徹された1冊となっているのではないでしょうか。好きな歌が多過ぎてここには引用し切れない。続きが読みたくなる歌人の方です。 ゆるやかに氷は水へ還りつつ駅舎を透過する翳り見す/いつしかに空の高みへ架かりたる月の静止に時ながれをり/ひとすぎにのびるなみだの清浄が水鳥の脚に満ちて立たしむ/水晶体を通るいづれの景物もひかりに過ぎず ひかりも あなたも2025/10/29
門哉 彗遙
7
たくさん付箋を貼りすぎた。 この歌集を読んでいる間は夢のような時間だった。 まだまだこの世界に浸っていたかったのに。 ◇生といふ痙攣をゆく黒揚羽ときをり影と入れ交はりつつ/上川涼子◇ あらゆる痙攣は生命の営み。 脳からの電気信号はまさに痙攣だ。 そしてシナプスを経て思考となり筋肉を動かす。 生命が持つ「抗い」や「震え」 そして「制御できない生命力の高まり」だ、痙攣というものは。 黒揚羽は震えながら飛んでいる 生と死の間を揺れながら。 2026/09/26
rinakko
5
〈月、そしてそこから冷えてゆく音叉 ひかりにみちて鳴ることもなし〉〈心臓をひとつ点して現し身は白夜、ひとよを燃え尽くるまで〉〈冷えびえと床にビー玉散りみだれ乱り尾をひく孔雀見ゆ、見る〉〈死ののちへ続く渇きか紫陽花に羊皮紙の質感をみとめつ〉〈カルヴィーノ読まばや夏の浜に似たカルビーのポテトチップス溢して〉〈わが閉ざすのち一冊の小説は少し膨らむ息づくごとく〉〈たひらぎてはなびらを待つ水の時その時を揉み魚ら泳ぐも〉〈雨は傘を脈打ちながらしたたりてこころに至る不可思議のこと〉〈音楽にとりのこされた2026/01/27
yumicomachi
4
文語旧仮名を活かした清冽な作品世界に魅せられてしまった。短歌を、詩歌を読むことの快楽を充分に味わうことができる贅沢な一冊だった。〈人のため作れる顔をほどきをへ真水のなかへこころをかへす〉〈手、ちひさい。と言はれた日から数日は手の大きさを思つて過ぎた〉〈いうびんのいうれい届くポストにて封筒の角硬く響けり〉〈祈る手に二月のうすき陽を綴ぢてあなたはなにを望むのだらう〉等342首が収録されている。1988年生まれの著者の第一歌集。栞に小池昌代、石松佳、菅原百合絵が文章を寄せている。2025年8月27日第1刷発行。2026/04/28
km
3
⚫︎鞍を外しし馬の背中のひろがりを潮の引きたる浜に見てゐつ⚫︎一身にみづを汲み上げさみどりの火焔のごとく羊歯の葉ふるふ⚫︎(サイン・コサイン)(サイン・コサイン)わづかなる波紋は雨にみひらきて消ゆ⚫︎景物はぬれて映れりみづうすく張りてひらける人の眼に⚫︎人のため作れる顔をほどきをへ真水のなかへこころをかへす⚫︎旋律がわたしをそつとおとづれてはばたくまでの舌はとまり木⚫︎扉から窓をのぞみて風通しよき行分けの詩を反芻す⚫︎紙魚よりも影あはきこの薄明をひととき覚めて花器にみづ汲む2026/04/24




