内容説明
ゆるやかに束ねられていく「書く」人々の物語。
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年発表した「スローなブギにしてくれ」で野生時代新人賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの作家活動のほかに写真家としても活躍し、数多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Vakira
58
拳銃と女性、そしてカフェ。この三つのアイテムが揃えばフランス映画になるらしい。酒が飲めるバーならアメリカだが、カフェといったところがフランスらしい。日本では竹の物差し、輪ゴム、標的のポンカン飴の紙の箱。簡易輪ゴム銃で箱に当たれば短編小説となる。そしてモデルガンは文鎮となる。カフェの場所、設え、彼女の服装、ヘアスタイル、バッグ、シューズ等小道具の説明は丁寧過ぎる程。これでその空間の雰囲気が醸される。あとは男女の会話が動くだけ。同棲ではなく同居なんてのもあり得なさそうで良いよい。片岡義男さん82歳の最新作。2021/09/23
Roko
28
この本に登場するライターや編集者の人たちは、様々な理由で喫茶店へ足を運びます。私鉄沿線のちょっとこだわりのある珈琲を飲ませてくれる店、神保町の裏道の店、どこの店であっても、きっと深煎りの珈琲がおいしいお店なのでしょう。片岡さんがよく通っている店なのかもしれません。小説を書こうとしている人たちの会話を読んでいると、なるほど、こんな風に書いていったら意外とサラサラっと書けちゃいそうだなって気分になってきました。特別な事件なんか起きなくたって、日常を切り取ることで物語は進行していくんだなって感じです。2021/10/09
tetsubun1000mg
14
20,30代の小説を書こうか悩んでいるライターなどの日常を短編にして、連作集にした本かな。 乾いた風景描写と、ポツリポツリとかわす会話がいつもの片岡義男の文章を感じる。 80代のはずだが、文章に無駄がなく研ぎ澄まされた感じは変わらないようだ。 登場人物やシチュエーションには、最近読んだ小説や短編に出てきた気がするのだが、そのもとになる設定をまとめたのがこの短編集なのかな。 片岡氏の後書きにもそのようなことが書いてあった。短編の中では「レモネードとあさりの貝殻」が色彩、映像が浮かび上がってきて好みだった。2021/08/12
MASA123
10
1970〜80年代にかけて、バイクや喫茶店、男女の会話を軽やかに描いた短編群で一世を風靡した人だ。 だが、2020年代になっても彼の作品世界はほとんど変わっていない。八十歳を過ぎても、あの静かな会話と淡々とした語り口、都会の片隅の光の描き方がそのまま続いている。 インタビューで彼はこう語っている。 「老いについて書こうと思ったことは一度もない。 それを書いた瞬間に、僕の小説は“今”ではなくなるからね。」 なんて、カッコイイのでしょう。2025/11/05
かわかみ
5
小説を書こうとする男または女の目線で語られた体の短編小説集。相互に独立した話だが、共通するテーマは小説の構想を練る話。20代後半から40歳くらいまでの彼または彼女に対して女または男が対峙し、恋心のような友情のような感情を交えた淡々としたダイアローグが紡がれる。こんなに粋で知的な会話を女性と交わしたことは残念ながらない(笑)。オーセンティックなバーでバドワイザーをベースにしたシャンディガフでも飲みながら妄想を広げるとこういうお話が書けるのかな(笑)。2024/11/10




