感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
70
「人食いバラ」「青衣の怪人」「魔境の二少女」「すみれの怪人」4タイトルの児童向け長編小説収録。西條八十の文章は上品で丁寧ではあるが、言葉選びが現在の感覚では過激なものが多く(気××いが頻出するなど)、ドキリとする瞬間が多々あった。その上、昔の作品なので展開が強引というか剛腕というべきか荒々しく、印象がなんともアグレッシブ。どの作品も少女が主役で、行動的に活躍し痛快。すこぶる面白い。特に「魔境の二少女」は南米が舞台の堂々たる秘境冒険活劇で読み応えあった。主人公がフランス人美少女で、射撃の名手なのも高揚する。2023/03/06
keroppi
69
「少女」なのである。「少女」向けの冒険探偵小説4編。作者は、西條八十。「少女」は、不遇な生い立ちながら、利発で、聡明で、怖がらず、大人顔負けの大活躍。きちがい博士に、土人に、悪者に、生き物を殺したがる「少女」に、立ち向かう。読者である「少女」達も、その活躍にハラハラドキドキ胸躍らせたことだろう。やがて、幸せな結末を迎える。「少女」達の、なんというロマンティシズム。ロマンティスト西條八十描く「少女」達。「少女」なのである。2018/11/01
のりすけ
14
懐かしさに負けた~~。でも「幽霊の塔」が入っていなくて残念。「くだってのぼり右の手を うごかし神に感謝せよ」のフレーズだけが記憶に残り、幼き頃より探しまくったものの情報を得られず「こりゃもう、探偵ナイトスクープにおすがりするしか無いか」と思った頃にネットで「幽霊の塔」だと知った喜びったら。「幽霊の塔」読みたかった…。でもこちらの4作品も面白かったです。お上品なんだか蓮っ葉なんだかわからない口調にほのぼの。2018/11/19
ぶうたん
9
初書籍化の1編を含む稀覯本4長編が収録された大部の本で、刊行されたことに大きな価値がある。内容はと言えば、期待が大きすぎたせいか、昔のジュブナイルを読もうという心持にならないと虚心坦懐に楽しめるとは言い難い。大人なので仕方がないけど。昔の作品のため言葉が直截的で説明が難しいだろうから、子供には読ませられない。続くのが高垣眸と野村胡堂という選択はややテンションが下がるが、このまま無事にシリーズが続くことを願う。2018/10/08
山崎にう
3
図書館本。「人食いバラ」は貧乏な少女が一気にお金持ちになる展開で、昔の少女漫画を思い出す。「青衣の怪人」は一転して身近な家の中での怪異だが、隠し部屋や精神病院などに舞台が移行して面白かった。「魔境の二少女」は少女が主人公にしては珍しい冒険小説。先が見えなく、読む手が止まらなかった。「すみれの怪人」はかっこいい年上のお兄さんが出てきて、恋愛要素ありかと思いきや全くなかったのが意外。書かれた時代が恋愛禁止だったのかな。ちなみに私が一番ひっかかった点は『人食いバラ』なのに”人を食べるバラが出てこない”。2018/11/26