内容説明
業平が後世まで愛された理由とは―和歌と恋と業平をめぐる人々の物語。
目次
色好みの主人公
業平の生きざま
業平の父、阿保親王
曾祖父、藤原乙叡
業平の母、伊都内親王
業平と紀貫之
大宰権帥時代の阿保親王
在原朝臣の賜姓
業平の兄弟たち
在原守平〔ほか〕
著者等紹介
井上辰雄[イノウエタツオ]
1928年生れ。東京大学国史科卒業。東京大学大学院(旧制)満期修了。熊本大学教授、筑波大学教授を歴任す。筑波大学名誉教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒロミ
9
そんなに厚い本ではないが読むのに時間を要した。著者の業平に対する思い入れが伝わってきた。ちょっと読みにくい気もするが、なかなかいいです。業平メインの著かと思いきや業平と同時代に生きた人々をいろいろ紹介していて平安初期がよりよくわかる。しかし高子様は晩年皇太后を廃されるような不倫をしていたのですね…何て奔放なんだ。2015/01/27
花宴
3
在原業平の親兄弟から子供、孫、周辺の人物の説明が結構あり、業平まで行き着くのに遠いな~と思いながら読んでました。それはそれで非常に興味深く、なぜ惟喬親王と親しくし、最後まで励まし続けたのか周辺状況を知ってようやく理解できました。業平に政治嫌悪があるのはなんとなく認識していたけど、それが逆に彼の政治的な立場になっていたのかもなあ、と思いました。確かに業平の周囲に藤原氏は少ない(女は除く)。権力中枢から弾き出され雅方面に邁進する貴公子たちがいたからこそ、和歌の文化が今に残るのだな~。2016/12/06
ちあき120809
1
最初の1/3ほどは業平の親族と昇任の変遷で、特に行平に関する記述が多い。全編通して業平個人にスポットを当てるのではなく、その周囲の人々を通じて、業平の身上を炙り出している。「伊勢物語」第6段の、"芥川"に"飽く"という高子の気持ちが暗示されていると読む話や、第82段の、紀有常との七夕の歌のやり取りに娘に寄り付かない業平への皮肉が込められていると読む話、「古今和歌集」の詞書を更に敷衍して一つの歌物語にしたのが「伊勢物語」であると読む話など、「伊勢物語」に筆者独自の解釈を加えている点が非常に面白い。2020/07/04
xuxu
0
在原業平≠色好み。著者は様々な史料を駆使し、真の業平像に迫る。業平の生きた平安初期、藤原氏が他氏排斥を行い、権力を手中に収めていく。立太子をめぐり藤原氏の前に敗れた惟喬親王と紀氏。業平は彼ら敗者に寄り添う。一方で、藤原氏の切り札、高子(後の清和天皇妃)と恋をする。政治的には反藤原を貫きつつも業平の恋に垣根はない。だがこの恋は結果だけ見れば、藤原氏を出し抜いたようにも見える。私は業平の生きざまに反骨を感じた。後世の人気の理由の一つかも。業平の紀氏との結びつきは『古今集』編纂とも関わる。何しろ編者は紀氏。 2017/04/15