内容説明
米空軍最高機密研究施設では新たなサイボーグが開発されていた。それは、生体と金属とを組み合わせて設計された生物兵器で、“WE3”というコードネームをつけられた3体のプロトタイプだった。WE3には最新鋭の軍事用ハードウェアが組み込まれ、彼らは自律的でありながらも、忠実にして完璧に無慈味な究極のスマート・ウェポンであった。だが、彼らが成功作だったとはいえ、所詮プロトタイプのため、テスト完了と共に解体されることになっていた。しかし、本来の感覚を呼び戻したWE3は、廃棄処分を前に脱走を試み、恐怖と混乱に満ちた外の世界へと飛び出していった。執拗な追跡者達に対し、WE3は戦いを挑むのだが…。本書は、アメリカで発表されたオリジナルストーリーに新規画稿10ページを追加し、巻末に25ページ以上のラフスケッチやメイキング資料等を収録した『WE3:THE DELUXE EDITION』の邦訳版である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
allite510@Lamb & Wool
8
2004年発表のアメコミ。兵器としてサイボーグ化された犬、猫、兎の、「オウチ」を求めての逃避行。凝ったコマ割りが、時に流れとリズムを分断してしまうところがあり、翻って日本漫画のコマ割りの洗練ぶりを思ってしまう。ストーリーもデザインも人物造型も今ひとつではあるが、作者達の絵作りへの気合いに、あり得たかもしれない「マンガの進化の別の道筋」に気づかされるような気がするようなしないような。2018/01/07
ビッチュウ
4
軍事兵器として改造されたイヌ、ネコ、ウサギが、廃棄処分を免れ脱出する話。あらすじ通りの暗い展開なのだが、実験的な三次元的なコマ割りなど、仕掛けが面白い。人体の破損の描写が少々グロテスクではあるが、改造された動物の痛ましさや扉絵で動物達を探す飼い主達の張り紙が掲載されており、どちらかといえばそれらの方が辛い。劇中でも少し言及されるが、人間よりも動物達に寄ってしまう人の心情にも気付かされる。最後は希望があって本当に良かった。2014/03/06
fukumasagami
3
きみにとっては生物工学技術の見事な成功だろうが、私にとっては怒りに満ちた3匹の小動物だよ 殺戮マシンにしゃべり方を教えるとは、どんなバカだ 彼らをあの悲惨な境遇から解放してやりたまえ、ドレンドル博士 そして、メディアの取材に備えて身ぎれいにしておくんだ2012/08/20
イコ
2
アメコミにしては珍しいオリジナルストーリー、生物兵器として改造された犬、猫、兎の物語。残虐行為もキッチリ描写していて、序盤にある見開き滅多撃ちが絵が鮮烈で度肝を抜かれる。分かりやすいストーリーかつ疾走感があって一気に読める。時折細かいカットを羅列する描写の絵があるが、独特でそこも好き。終始辛いけど、一応救いのある感じでは終わる。扉絵にそれぞれの迷子になったときの写真(絵)があって、当然兵器か前の姿なので哀愁を誘う。私的には名作かな。2020/09/16
SRサイタマノヘボヤー
2
王欣太の『蒼天航路』カバーあとがきにて、「人が殺しあう話を描いているスタッフが、虎を殺す場面で「残酷だ」と声を上げた」という話が書かれている。人の死の場面を平然と受け流しつつ、動物の死に反応する感性とは何なのか? 残酷とは? この作品には残酷な表現描写が数多くある。そして、それらの中で何をより残酷と感じるのか? 「人が何かを残酷と言うことの意味」が、描かれている。2013/11/19