出版社内容情報
同人誌界で知る人ぞ知る、気鋭の書き手による、初エッセイ集。書物の香気ただよう世界を軽やかに散歩する。作家・田中小実昌、加能作次郎、川崎長太郎らの風景。辻潤と浅草。中野重治と高野文子のかかわり。中原中也『山羊の歌』ができるまで・・・など。人と本と日常をめぐっての、心暖まる名文を集めた珠玉の一冊。著者は1971年生まれ。詩人、エッセイスト。
内容説明
旅するエッセイストは、ボマルツォに向かう。そこでどんぐりを拾う。田中小実昌の呉の実家では小鳥の巣だ。行く先々で何かを拾う人でもある。川崎長太郎が眠る寺では、やさしい住職と出会う。記憶のお土産だ。人と本の世界を旅する珠玉のエッセイ集、ここに誕生!本を手にする喜びがふくらんでくる。読書の楽しさが心にしみてくる。
目次
花さき鳥うたう現実を拾いに―永田助太郎ノート
寺島珠雄さんの振れ幅
辻潤と浅草
一人称単数カモイヨウコ
渡辺武信―ある建築家の住居論
空想の選択―「黄色い本」と「空想家とシナリオ」
蝙蝠飛ぶ柳の下にタルホとハルオは出逢ったのか
カメヤマイワオさんからの手紙
戦後民主主義の少女と手作り
ぼくは背広で旅をしない〔ほか〕
著者等紹介
扉野良人[トビラノヨシヒト]
1971年、京都市に生まれる。多摩美術大学卒業。書物雑誌『sumus』同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
20
☆☆☆★ 永田助太郎、辻潤、田畑修一郎、加能作次郎、川崎長太郎といった、かなりマニアックな詩人や作家について書かれたエッセイ。読む人を選ぶ本であるが、著者の眼差しが感じられて良かった。表題作は須賀敦子を彷彿とさせて、特に良かった。2025/02/14
きりぱい
3
ボマルツォは澁澤龍彦の「滞欧日記」に登場した怪奇な庭園。その本の記憶に誘われて著者はそこを訪れる。澁澤が拾ったどんぐりに思いを馳せる部分がある。そんな風に、読んだ本から頭に浮かべた風景を求めて旅に出たり、机上で深い考えに飛んでしまう様子などが綴られる。作家や作品のチョイスは知らない方が多いという渋さだけれど、表題エッセイの他に読みやすかったのは、足穂と梅崎春生の項、「戦後民主主義の少女と手作り」、「僕は背広で旅をしない」あたり。田中冬二が名前だけでもちらっと出て来たのはうれしい。2009/07/06
すすぎ
1
作品と旅が一つの世界に重なる。文学をテーマに旅をするなら、須賀敦子の世界を歩いてみたいと思う。2015/02/01
ヒツジ
1
ボマルツォ庭園は、行ってみたい場所のひとつなのと、晶文社の本が好きなのでなんとなく図書館で手に取りました。本に誘われる旅の空気がつまっていた。紹介していた永田助太郎の詩はおもしろい。ボーカロイドに歌わせてみたいような。機会があったら読みたいです。2011/12/17
utataneneko
1
本に誘われ呉へ、能登へ、小田原へ。本をめぐって思索し旅するエッセイ集です。2008/07/21