出版社内容情報
長期不況、財政危機、グローバル化、高齢化、人口減少は、日本経済全体だけでなく地域経済にも深刻な影響を及ぼしている。このような経済の環境変化の下、新しい地域経済モデルの構築が焦眉の課題となって久しい。高齢者や女性の経済市場への参加促進、Uターン・JターンやIターンによる人口減の食い止めといった方策に共通するのは、生活と調和する働き方、つまりワーク・ライフ・バランスが求められているという点である。
都市の生活においては、仕事に追われ生活がないがしろにされがちである。とりわけ女性には往々にして家事と仕事で二重の負荷がかかり、ワーク・ライフ・バランスを保つことが難しい。その解決策の一つと考えられているのが、在宅勤務やモバイル勤務などのテレワークである。また、これまでの地域産業政策に欠けていた、農林畜水産業と商工業を結びつける動きも近年活発化している。商工業の側からは「農商工連携」、農林畜水産業の側からは「六次産業化」と呼ばれる動きである。
本書は、京都府北部地域・徳島県・滋賀県の事例をもとに、特に人口減少化の中で地域が生き残りと再生を図るにはどのような方策がありうるかを検討したものである。京都府北部では伝統的な織物産業の分野で、若手経営者らがグローバル化にチャレンジしている。徳島県上勝町では、「葉っぱ」を「つまもの」として売り出すことで新たな市場を開拓した。また同県神山町や美波町では、山間部や漁村に東京などのIT企業のサテライトオフィスを誘致することで地域再生に取り組んでいる。その他、女性企業家の新ビジネスや各地の農商工連携・六次産業化など多彩な取り組みを通じて、ワーク・ライフ・バランスをも視野に入れた新たな地域経済モデルの可能性を展望できればと思う。(まつおか・けんじ)
【著者紹介】
龍谷大学経済学部教授。専門は産業組織論、中小企業論。主要著作『風力発電機とデンマークモデル』(2004年)『地域産業とネットワーク』(2010年・編著)『事業承継と地域産業の発展―京都老舗企業の伝統と革新』(2013年・編著)など。
内容説明
生き残るための新しい地域経済モデルの構築。ワーク・ライフ・バランスをいかに保てばいいのか。
目次
第1章 人口減少の現状と問題解決の途―総論と先行研究
第2章 伝統産業のグローバル化と若手の育成―丹後織物産地の挑戦と課題
第3章 新しい経済環境下における、女性による企業経営
第4章 畜産経営における経営革新と新たな事業展開―農商工連携・6次産業化に取り組む経営を事例として
第5章 地域経済再生に向けた地方自治体の取り組み―京丹後市の場合
第6章 徳島県上勝町―U・Iターン者の定住・起業と地域づくり
第7章 ITを活用した過疎地域再生―徳島県神山町・美波町の取り組み
第8章 滋賀県の産業振興
著者等紹介
松岡憲司[マツオカケンジ]
龍谷大学経済学部教授。神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(経済学)。尾道短期大学、大阪経済大学を経て、1999年より現職。1997年にコペンハーゲン商科大学客員教授。専門は産業組織論、中小企業論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- ポスト構造改革の経済思想