内容説明
飢えや迫害などの苦難を逃れ、「自由の国」アメリカにやって来た移住者の語られざる試練の体験を照らし出す、異色のドキュメンタリー・ノヴェル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
57
エリス島は、マンハッタンの沖合にある、貧しい移民用のイミグレーションが置かれていた「涙の島」。また、G・ペレックは実験文学集団OULIPOの中核メンバー。ここでは映画監督のR・ポールとともに、エリス島を回顧するドキュメンタリー映画を製作。その書籍版が本書。「今、何故エリス島か?」の問いには、やはり彼らの共通する出自―すなわちユダヤ人であることが深く関わるだろう。ヨーロッパのいずれの地にいても、ドイツ人でもなく、ポーランド人でもなかった彼らユダヤ人にとって合州国は、新天地だったのかを深層から問うのである。2013/07/31
ののまる
11
新大陸アメリカに移住希望する人びとの窓口だった、エリス島。その劣悪な環境を想い出したくない人もいれば、新天地のアメリカに感謝する人もいて、母国を脱出した理由もさまざま。2024/11/18
水原由紀/Yuki Mizuhara
4
ある時期の、特定の場所で起きていた出来事の記録を忠実に集めようという試み。『Wあるいは~』を現実の方へ寄せてやるとこうなるのかしら。徹底して事実を記録して列挙するのだけれど、散文詩の形をとった場所だけが例外で、続いてインタビュー形式を取っているところも同じく“怪しい”。こうした形で虚実あるいは確度の高低を何度も往復させるテキスト…の強度、魅力的な空間をうまく作ること…に尽きる。すごくいい時期に出会った。2012/10/07
nranjen
1
ペレックの芯が記されている2016/07/08
isao
1
移民は、何処かに属しているが、どこにも属さない。地上立つ二つの足が、重力から解放されたように、ふわりふわりと漂っているようだ。遠く、故郷を思い、もしくは忘れ、ここが生まれた場所だ、と確認しながら生きる。正確な事が重要ではなく、信じる事が必要な物語。2013/03/08