内容説明
ルネッサンス華やかなりし花の都フィレンツェ、気高く聡明なロモラは、謎多き一人の美青年と出会う―メディチ家の追放、フランス王のイタリア侵攻、そしてサヴォナローラの神権政治という激動の時代を舞台にしたジョージ・エリオット唯一の歴史小説。
著者等紹介
原公章[ハラキミタカ]
元日本大学文理学部教授。日本大学大学院文学研究科単位取得満期退学。現在、日本大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
48
1994年の失業時代、本を借りまくり、その中で発見した作家(の「ロモラ」という作品)。メルヴィルの「白鯨」やマルケスの「百年の孤独」の凄みを実感した年でもあった。その思い出の「ロモラ」をゲットし今夏八月一ヶ月を費やして再読した。じっくりゆったりと大河小説を堪能したよ。時代やテーマ的に重なる堀田義衛の「路上の人」にも参考になるかも。ブログ日記にもちょっと書いた: http://ameblo.jp/kyat/entry-12195828677.html 2016/09/01
らぱん
35
19世紀の英国人作家による15世紀末のイタリアの歴史物語で、二段組の700頁は物理的にも重量感があり読了の達成感を味わった。「ロモラ」は主人公の名前で、物語は彼女の半生であり群像劇でもある。当時のフィレンツェの貴族の暮らし、路地裏の様子、女性の服装や髪形、ちょっとした軽口など、人間や生活の詳細な描写が登場人物を生き生きとさせている。歴史、地理、美術、文化、宗教など博覧強記的な背景描写で見えてくるものは、畢竟人間でありその在りようで、無常や諦観といった東洋的仏教的な思想を感じる不思議な読書体験になった。2019/07/01
ソングライン
18
ヘレニズムを愛しフィレンツェに富をもたらしたロレンツォ・メディチが亡くなり、ドメニコ会修道士サヴォナローラが神の国を説く15世紀末のフィレンツェ、名声を得ることのなかったヘレニズムの学者を父に持つ美しくもまだ人生の目的を知らぬ女性ロモラ。名声のために手段を選ばなかったヘレニズムの申し子夫ティートとフィレンツェを神の国にしようとしたサヴォナローラの予言、二人を信じることの出来なかったロモラがたどり着いた本当の生きる目的とは。この壮大な歴史物語に酔い、フィレンツェの街に暮らした3週間、感動です。2022/05/29