出版社内容情報
幻想文学史上、不動の名作を一望するアンソロジー、第二巻刊行!
一九七〇年代の名アンソロジー《怪奇幻想の文学》の編者、紀田順一郎・荒俣宏の監修のもと、古典的名作を新訳し、全六巻に集大成。怪奇幻想の真髄を伝えるアンソロジー・シリーズ。第二巻は「吸血鬼」をテーマに、ドイツ、ロシアの古典作品から「ドラキュラ」外伝を経てライバー、マシスンらのモダン・ホラーまで、小説で「妖魅の文学史」を一望する。
【収録作品】
K・A・フォン・ヴァクスマン「謎の男」/A・K・トルストイ「吸血鬼(ウプイリ)」/ブラム・ストーカー「ドラキュラの客」/イヴリル・ウォレル「夜の運河」/カール・ジャコビ「黒の啓示」/シーベリー・クイン「「クレア・ド・ルナ――月影」/フリッツ・ライバー「「飢えた目の女」/リチャード・マシスン「血の末裔」「白い絹のドレス」/ロバート・エイクマン「不十分な答え」/解説=下楠昌哉
内容説明
古典・準古典の数々を通し、怪奇幻想の真髄に触れていただきたい。本書は、自由な想像力が創りだす豊かな世界への、恰好の道案内となることだろう。(編者)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
74
吸血鬼小説アンソロジー。古典からモダンホラーまで幅広く収められている。冒頭の「謎の男」からして典型的なゴシック小説で、読むのが楽しくなってくる。その期待は裏切られず、ストーカーのプロトタイプ・ドラキュラともいうべき作品。ジャコビのどこか神話めいた作品と古典的な吸血鬼を堪能。その一方で「飢えた目の女」みたいなアメリカの大衆社会に寄生するかのような作品あり、言わずと知れた巨匠マシスンの作品ありと、後半はまた一風違った方向が空楽しませてくれる。とどめは理解し難いが、恐怖だけ忍び寄るエイクマンと。最高でした。2023/05/26
kasim
32
自分の好みなのだろうが、19世紀前半の二作品が圧倒的に面白かった。特にA・トルストイは『吸血鬼の系譜』に収録されていた「吸血鬼の家族」の土俗的なタッチ(これもよかった)とはまた異なるゴシック調で複雑なプロットにわくわくする。マシスン「血の末裔」も初めて読んだ時より結末の流れにあらためて感心した。少年が我に返り、今頃「まとも」になっても遅いわ!と読者に思わせてどんでん返し。巧い。解説にも少しあるが、ヨーロッパの吸血鬼の自然さに対し新大陸は作家のどこか必死な思い入れが感じられる。2023/08/07
かわうそ
21
今となってはよく知られる吸血鬼の特徴が少しずつ形成されながら、モンスターから憧れの対象へと変遷していく過程が感じられて面白かった。お気に入りはイヴリル・ウォレル「夜の運河」、カール・ジャコビ「黒の啓示」、リチャード・マシスン「血の末裔」あたり。2023/06/12
めがねまる
10
吸血鬼小説の短編アンソロジー。ドラキュラ以前の小説2作から始まり、ドラキュラの番外編、アメリカでの吸血鬼小説が続き、ドラキュラのような舞台設定の小説で幕を閉じる。作家や時代によって吸血鬼の捉え方や設定が異なるので、いつの作品か、作家はどこの国の人かを知って分析しながら読むと興味深い。物語として面白かったのは「黒の啓示」「夜の運河」特に夜の運河はポーのような雰囲気で始まり、1920年代のヴァンプのような女吸血鬼が出てきて、最後は大衆小説らしい派手な終わり方なのが面白かった。2023/03/12
あくび虫
6
吸血鬼ものはテンプレートが固まりすぎていて、ワンパターンなところが趣味ではないのですが、予想外に面白く読みました。ヴァクスマン『謎の男』などは、コテコテがすぎてなかなか趣深く、一方フリッツ・ライバー『飢えた目の女』は(吸血鬼ものなのかは少々怪しいですが)、時代に乗って生きながらえる怪異の系譜を垣間見たようで興味深かったです。――一巻に続いてイラストが美しいです。2023/08/21
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