内容説明
正義は経済を忘れていないか。経済は正義を忘れていないか。アマルティア・センの問いかけでセン・セミナーが始まった。贈与と相互性、選好と推論、権利と自由、ネオ共和主義、そしてジェンダー…いかにして不正義に抗するか。
目次
正義を忘れた経済学
経済・法・倫理
ネオ共和主義とセンの経済的・法的・倫理的要件
パラジャパティ・テスト―アマルティア・センへの応答
民主的な公民の権力
ジェンダー正義という挑戦
贈与、市場、社会正義
正義と公共的相互性―公的扶助の根拠
選好で推論する?
厚生経済学における個人的権利と自由の諸構想:再検討
多次元福祉統合指数の適用について―フランス、ドイツ、イタリア、イギリスにおける健康と所得の不公平
センの応答―経済学的思考の転回
貧困研究の視座
レヴィナスとセン、そしてロールズ―「人間同士の根底的差異」にもとづく正義と経済
著者等紹介
デュムシェル,ポール[デュムシェル,ポール][Dumouchel,Paul]
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
後藤玲子[ゴトウレイコ]
一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
5
「センの意図をつかむには、人権や民主主義に関するエッセイを参照することが有効である…彼は…人権概念に懐疑的なベンサムやオニールらの論拠を吟味する。彼らの中心的論拠が、想像上の権利は想像上の効力しかもちえない、法的権利と異なって権利と対になる義務を定められないから、というベンサムの言葉に代表される。人権に対するセンのスタンスは、権利概念の効力をもっぱら制度化に求めるこのような姿勢への批判に立脚する。批判にあたって、センはカントの不完全の義務をもちだす。制度化されていない権利は…内容を確定し得ないことは確か」2017/03/19