内容説明
現代に信仰詩は可能か?純化を求め、自己完結を貫く人間の言葉の中で、神の啓示への応答としての信仰詩はどのようにして生まれるのか?人間の閉ざされた言葉の前で、自らをへりくだらせた「神の詩」としてのイエスが、砕かれ、十字架につけられるという出来事に直面するとき、破れた人間の言葉から「二人称的世界」は劈かれ、讃美の詩は生まれる。聖書詩学の試み。
目次
序 聖書詩学?
第1章 詩人イエス―「神の詩」の存立とその語法について
第2章 讃美のはじまり―啓示への応答としての「うた」
第3章 ルター讃美歌の生成―「ひとつの死、別なる死を喰らいて」
第4章 バッハ・詩と音楽の関わり―カンタータ第一〇六番「神の時は最良の時」
第5章 ドイツ宗教詩と世俗化の問題―信仰の歌と問いかける詩
第6章 ハーマンにおける「霊(ゲーニウス)」―「聖なるもの」の喪失に抗して
第7章 聖書詩学と『美学提要』―キリスト教文学における古典古代の伝統とその受容
第8章 譬えと物語り―語り手の問題・賢治にふれつつ
結び 現代における信仰詩の可能性
著者等紹介
川中子義勝[カワナゴヨシカツ]
1951年、埼玉県与野市に生まれる。埼玉大学、ドイツ・マールブルク大学で哲学を学んだ後、東京大学大学院人文科学研究科(ドイツ文学)修了。熊本大学助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科(及び教養学部)教授。ドイツ文学・思想史、とりわけ、ヨハン・ゲオルク・ハーマンの研究・紹介に努めてきた。著書として『ハーマンの思想と生涯』(1996)『北の博士・ハーマン』(1996)『北方の博士・ハーマン著作選』(2002)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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