内容説明
「奥さんに男ができたんだ」―六十六歳の大学教授・治夫は、元教え子の愛人にそう断言され、最近きれいになり、性に対して積極的になってきた妻に、疑いと嫉妬を燃やし始める。一方、五十九歳の妻は、四十年ぶりに同級生の男性と出会い、恋におちる。夫婦は十年ぶりにセックスに挑むのだが…。初老の男女の性と生を、リアルに切実に描き、各紙誌で大絶賛された恋愛長篇、待望の文庫化。
著者等紹介
広谷鏡子[ヒロタニキョウコ]
1960年香川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。95年、「不随の家」で第19回すばる文学賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
85
「読書メーター」のお陰で出会えた一作。大学教授の夫66歳・妻59歳、40年連れ添った熟年夫婦の物語である。ある日、夫は10年ぶりに妻への欲情にかられます。(その間、夫には元教え子の恋人がいます)夫の身勝手さに男のエゴが垣間見えます。でも、この物語は、これで終わりません。「近頃、妻が変った。男の気配を感じるな」と夫が違和感を覚えます。このどっちもどっちの夫婦に侘しさを感じます。さめたこの夫婦は、まさに「花狂い」の「似たもの夫婦」である。こちら再読の気力は残ってないが、読んで良かった面白い小説でした。2022/04/15
巨峰
49
面白かった。66歳で大学教授の夫と、もうすぐ還暦のその妻。妻が父の介護で毎週北海道の実家に帰るのだけど、そのたびに綺麗に若やいで帰ってくる、夫に芽生える疑心暗鬼〜〜。妻は本当に浮気しているのか??老いと性、老いと夫婦生活というテーマ以前にどこに着地するのかわからないという小説としての面白さ、老境においてなお性に狂う人びとの哀しさと醜さがあった。初めての作家さんだけど、力量はあると思った。しかし、この大学教授のエロ振りはひでー。今なら一発免職もんでしょうね。2015/02/15
桜もち 太郎
13
大学教師の夫治夫67歳、元教え子である妻ふみ子60歳。老いと性がテーマの物語かな。治夫には不倫相手がおり(これも教え子、どんな教員やねん)、スケベの限りを尽す。この時点では治夫優位の展開だが、ふみ子が北海道に住む父親の介護に通い、同窓会で再開した堀田とちちくり合うところから立場は逆転する。帰省するたびに綺麗になるふみ子、敏感に感じ取る治夫。治夫は不倫相手から、朽ちていく匂いがするとすてられ、妻からも相手にされず、転がり落ちていく。と、コミカルな感じで書いたが結構内容は切実だ。哀れな夫と晴れやかな妻の物語。2023/11/27
舟華
6
この登場人物たちを「年齢が受け付けない」とかではなくて「生理的に受け付けない」というレベルで受け入れることができなかった。男の勝手な言い分と狡さと弱さが醜く光る。20年ほど前の著作ではあるけれど、THE昭和。これから例えば私が結婚して60代になったらこの小説が美しいと思えるのだろうか。全くそう思えない。それでも終わり方がそこまで嫌いではなかった。読む人によって違った未来を描くのだろう。2020/12/18
☆(´(ェ)`)☆
4
久々に読みにくい本でした。挫折しかけたが何とか読了。テレビで良いと言ってた気がするが…私には合わなかった(T^T)老年の《性と生》の話だが私にはエロオヤジ話に感じてしまった。所々、ふみ子さんに共感できる部分もあったが………50、60代になって読んだら違うのかな?2017/01/27