内容説明
近世大坂は単なる商業都市ではない。人と物とが行き交う街は知識と情報が交差する街でもあった。本書は、近世大坂に花ひらいた鮮烈な批判精神、懐徳堂の知識人たちの群像を、五人の気鋭の研究者によって浮き彫りにするものである。読者は本書を通して、近世大坂がゆたかな文化創造の舞台であったことに、改めて気づくであろう。未来の大阪のあるべき姿がここにある。懐徳堂春秋記念講座での同テーマの講演にもとづく論集。
目次
懐徳堂知識人の学問と生
反徂徠としての懐徳堂知識人
中井履軒の天文学とその背景
梅岩心学と懐徳堂知識人
市井の君子富永仲基
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
2
講演集。「中井履軒の天文学とその背景」がとても面白かった。短い文章ながら、ヨーロッパで伝統的なプトレマイオス天動説から様々な折衷案を経てコペルニクス地動説が認知されるに至る流れ、その宇宙観は古いものから新しいもの、折衷的なものまで、宣教師によって並列的に中国にもたらされ、後に日本へと流れ込んだ。日本においてはそれと同時に、蘭書から直接に長崎へ流れ込む場合もあった。三地域における潮流の絡み合いや地域それぞれの天文学の意味などが述べられていて、日本の江戸期の天文学を考える上でとても勉強になった。2015/06/07