内容説明
09年9月、新政権は八ッ場ダムの建設中止を宣言した。計画発表から57年の歳月で、何が失われたのか。天下りや随意契約等ダム政策の裏面に迫るとともに、建設予定地の人々の暮らしや風土を丹念に描く。
目次
第1部 長野原町の癒しの自然と水を追って(タニシよ、生き続けたいだろうね;ダムに沈む大地を耕す、不条理さ;先祖の苦労を思うと、ダムはむごい…;構造的不況に曝されたワサビ栽培 ほか)
第2部 いらない!八ッ場ダム(問う、逆説・まやかしの論理(一)―自然と共生できるか、ダムを造りたい人たちよ
問う、逆説・まやかしの論理(二)―防災ダム直下の学校なんて!
あなた、この水飲めますか―八ッ場ダム予定地上流、その“あぶない水事情”
気がついていますか、水道料金のカラクリ―ダム建設は水没者だけの問題か ほか)
著者等紹介
鈴木郁子[スズキイクコ]
1948年、群馬県に生まれる。30代半ば、文学講座で学び、「読んで、書いて、行動する」課程から“人間の自由”に目覚める。以後、地域に根ざした各種市民運動に連なる日々。この実践活動をこなしつつ、表現活動も手放さず、今日に至る。1988年「第十五回部落解放文学賞」小説部門に「糸でんわ」が入賞。2003年第七回「女性文化賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のりのり🍳ぽんこつ2𝒏𝒅
12
ダム建設是非に翻弄された家族の物語、辻堂ゆめ『山ぎは少し明かりて』を直前に読み、そう言えば…と思い出したのが、この八ッ場ダム。10年くらい前にTVでよく取り上げられていたけど結局どうなったんだっけ?と調べたら2020年にひっそりと完成していたことを知ったばかり。でこの本、カバーのそでに「09年9月、新政権は八ッ場ダムの建設中止を宣言した」とあり、あれ?と思った。そうか、この本の出版2009年12月時点では中止だったんだと思い出す。何度も何度も町と国との政策に翻弄され続けた歴史がわかる巻末の年表が痛々しい2024/01/22
壱萬参仟縁
4
政権交代、大臣交代で、つくる、つくらない、と翻弄された地域の苦悶は想像に絶する。利根川坂東太郎の上流の話。タニシの生息地。わさび畑。そんな天然の資源が誇りだったのに、ダムに翻弄されて、全く、役人とか政治家とか、土地の人間の気持ちを踏みにじる愚策には呆れてしまう。ホタルも飛び交う地域でもあった。耕作放棄地を水田と見做したり、なんて杜撰な評価をしてでも、ダムなのか。ダムは原発と一緒で、結局、高くつく。取り返しのつかない自然破壊という代償。水道料金5倍にしたりして、移住させるような嫌がらせか。これではたまらん。2013/04/01
tomatobook
2
ダムを造る真の目的は治水・利水にあるのではなく、いつの間にかゼネコン体質の意地としての仕事の供給機関となってしまった。人口は減少傾向、ダムに頼らない治水の方法は他にもたくさんある。タニシの生息地だったり、ワサビ田があったり長野原は豊かな自然が多い。情緒的な文章が印象に残る。2023/02/19
kozawa
1
反対派が2004年に出した本を加筆して再度。村を守りたい視点で風情漂う本ではあるかも2010/01/28
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- 和書
- 教養としての芥川賞