出版社内容情報
1935年に創設されて以来、数々の文学シーンを演出してきた文学賞である芥川賞。あまたある受賞作のなかで、いまあらためて読まれるべき作品、小説の魅力や可能性を教えてくれる作品とは何か。
第1回受賞作の石川達三『蒼氓』から大江健三郎『飼育』、宮本輝『螢川』、多和田葉子『犬婿入り』、綿矢りさ『蹴りたい背中』、宇佐見りん『推し、燃ゆ』まで、23作品を厳選。あらすじと作品の背景を概説したうえで、社会状況も踏まえながら、作品や作家の内面・奥行きを文芸評論家と文学研究者が縦横に語り合う。
「芥川賞と三島賞、野間文芸新人賞」「卓抜な新人認知システム」などのコラムで芥川賞の意義も解説。芥川賞受賞作をめぐる対話を通して教養を深めるためのブックガイド。最良の「文学の航海図」を手にすることで、小説の多面的な読み方も身につく一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
94
歴代の受賞作23編の検証を通じて、芥川賞が単純な純文学の新人賞ではない事実を解明する。小説としての出来栄えに加え「社会の最先端の潮流を捉えているか」が、受賞を決める重要な判断材料となっている。時代の趨勢に敏感な作家が年2回も選考する短期決戦型のため、自分も向き合う日本の現実をくみ取ったり方向性を示す作品を自然と求めていく。逆に新しい傾向の候補作ばかり続き食傷気味になると、混ざっていた古風さを感じる小説に授与したりする。そうした芥川賞の選考史から作家と社会どう関わってきたかを描く、新たな文学史の試みなのだ。2022/02/18
アキ
90
1935年「わが国最初の民間文学賞」として文藝春秋が運営している新人作家の賞。この内23作品を取り上げて、お二人でその時代性、選考委員の論評も含めて論じている。こうやって眺めると、文学作品は時代を映す鏡のようだとつくづく実感する。「風の歌を聴け」と「1973年のピンボール」で2度候補になり受賞しなかった村上春樹の小説との比較が多くみられる。読んでみたくなった作品は古山高麗雄「プレオー8の夜明け」。最近の綿矢りさと宇佐見りんとの比較も面白い。毎年年2回のお楽しみ。今年もどんな作品が受賞するのでしょうね。2022/06/20
ris3901
7
読んだことのある作品のところのみ、ざっと読み。過去の受賞作品を23作取り上げて著者二人で論じる。2022/02/01
Riel
6
芥川賞は、15歳の頃自分と同年代の方がW受賞ですごく話題になってその2作品を読んでみたけどその時はそこまで好きだと思えず、それから長らく全然気にしていなかった。だけど、読書会で会った方が毎回候補作全部読んで仲間と予想している、と言っていたことやくどうれいんさんの本で候補作となった時のことを書いていたのを読んだのもあり、そういえば好きな作家も昔受賞しているし審査員だし、といきなりめちゃくちゃ興味が出て来たので読んでみた。文学のこと何もわからないから難しいところもあったけど面白かった!読みたい本増えた。 2023/10/30
乱読家 護る会支持!
5
人生のさまざまな場面で、ハッキリと言語化して書けないけれど、いい体験であれ、いやな体験であれ、なんとも言えない、なんとも表現出来ない感情となる事が度々あります。 優れた純文学とは、そのような「◯◯◯◯◯」な気持ちを表現したい、読書にも味わってもらいたい作家が書いた私小説的なものではないかなぁと、、、思いました。 だとすれば、、、沢山の純文学を読むよりも、その時々の自分の感情に寄り添った方が、より純文学的ではなかろうか?? と、純文学を読めない言い訳かな?? 知らんけどねー(笑)2022/05/19