内容説明
1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那、もう一人は高卒の伊東水矢子。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年に『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年、11年に『ナニカアル』で島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。15年に紫綬褒章を受章。21年に早稲田大学坪内逍遙大賞、23年には毎日芸術賞を受賞。『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』『燕は戻ってこない』など著書多数。日本ペンクラブ会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
511
ものすごいリーダビリティであっという間に上巻読了。面白いからスルスル読めたというのも確かにあるが、バブル期の狂騒を題材にした他作品と比較して"重さ"がないことも要因。個々のエピソードの練り込みが足りないのか、主要人物の欲への渇望みたいなものが、上滑りして軽く感じる。虚実入り交じった知謀もなく、この時代の話にしては、まだ動いている金額も小さい方。佳那も水矢子も望月も、染まりきらない中途半端さがあり、それも理由。特に佳那は、物語が進行するにつれ、どんどん魅力が薄れてくる。2023/05/09
starbro
425
桐野 夏生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 主人公達は、私の若干上の世代なので、バブル当時を懐かしく、上巻を一気読みでした。まだタイトルの意味は解りません。 続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-603.html2023/03/05
青乃108号
383
桐野夏生の本は十年以上前に何冊か読んでいるのだけど、この度久し振りに本書を読んでびっくりした。こんなに面白い作家だったかなあ。兎に角、読み手を物語に引きずり込む力が物凄く、時間を忘れて一切の雑念も持たずに読み耽ってしまう。バブル期さなかの証券会社を舞台に、同期3人の若者を取り込む狂騒の世界。これから下巻、どんな展開が繰り広げられるのか、楽しみで仕方ない。今晩も遅くまで読み耽ってしまうだろうな、明日も仕事なんだけど。2024/04/06
修一朗
272
バブル経済の狂騒と絶頂,転落がたっぷり詰まったお話。望月なんて全くもって自分と同世代なんだな。当時の同級生たちは当理系文系関係なしに金融に就職していた。同級生たちは山〇証券,日本〇業銀行,三〇銀行,にこぞって行ったのだ。全部なくなったけども。自分はその狂騒をはたから見ていたクチ。土地も株も値上がりしていくばかりで持たざるこっち側としては何が好景気だと思っていた。マハラジャなるものに入ってみようとあの手この手で入場しようとしたなぁ。別にいい思い出でもない。下巻へ2024/05/05
まちゃ
250
バブル景気が始まる1986年春に福岡の証券会社で出会った二人の女性、伊東水矢子と小島佳那。この後に二人はどんな人生を歩むのだろう。モラルなく株を売り込む証券会社と借金してまで株を購入する人々。バブルの結末が分かっていると不穏な展開しか想像できませんが下巻へ。2023/03/10