出版社内容情報
開国か戦争か。いち早く黒船来航を予見、未曽有の国難に立ち向かった伊豆韮山代官・江川太郎左衛門英龍の生涯を描く傑作歴史小説。
内容説明
領地の伊豆韮山では徹底して質素・倹約を貫き、有事には蜀江錦の野袴に陣羽織姿で銃士達を率い、英国船と交渉、それを退けた。「黒船来航」をはるか前から予見。自ら蘭学、西洋砲術を学び、海防強化を訴え、反射炉造築、江戸湾の台場築城を指揮した。誰よりも早く、誰よりも遠くまで時代を見据え、近代日本の礎となった稀有の名代官の一代記。
著者等紹介
佐々木譲[ササキジョウ]
1950年、北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。90年『エトロフ発緊急電』で、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。10年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞。16年、日本ミステリー文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
249
幕末の韮山代官・江川英龍の一代記。佐々木譲が、激動の時代を生き生きと描いてくれた。英龍、といえば、いまは、世界遺産にも登録されている反射炉を作った人、ぐらいに思っていたが、それだけの人ではなかった。誰でも知っている号令の「右向け右」を、定めたのもこの人だった。砲術の大家・高島秋帆と共にオランダ語から邦訳し、西洋式軍隊の必要性を説き、農民兵まで作ろうとしていた傑物だった。しかし、ペリー来航後、あまりにも多忙になり健康を急激に害した。安政2年1月55歳で逝去。小説の幕切れも、少しあっけなかったのは残念。2020/11/17
starbro
145
佐々木譲は、新作中心に読んでいる作家です。著者の幕臣三部作は『武揚伝』に続いて2作目です。江川太郎左衛門英龍は名前も知らず、物語を読むのも初めてとなります。幕末の綺羅星の如き英俊、清々しい物語でしたが、幕閣がもっと優秀だったら、明治維新ももっと変わっていたのかも知れません。それにしても単行本化されるのに10年以上かかったのは、何故でしょうか?主人公がマイナー過ぎるからでしょうか?未読の『くろふね』も機会をみつけて読もうと思います。2018/01/27
みえ
57
久々の佐々木譲さんの作品。歴史小説好きなのに、江川太郎左衛門英龍のことは知らなかった。だけど、勉強家で地位や年齢に関わらず、自分より知識のある人には頭を下げて教えを請う、そして質素堅実を心がけた人間性人間性読みながら惹かれた。2018/03/03
reo
36
江川太郎左衛門英龍。享和元年(1801年)5月13日伊豆国田方郡江川家、韮山の世襲代官職家の次男として生まれる。兄が早世し、英龍21歳の秋江川家の嫡子となる。英龍は西洋砲術を学び、海防強化を訴え、黒船来襲なども早くから予見していたが、南町奉行であった鳥居耀蔵に忌み嫌われ、幕府に有効な外交方針を上程してもことごとく”妖怪”に握りつぶされることとなる。耀蔵が失脚したあと、韮山反射炉造築、江戸湾の台場築城などを指揮した。英龍の意見具申をもっと早く採り入れておれば幕末はもっと違ったものになったかも。秀作です是非!2018/08/05
ちゃま坊
32
江戸時代の国防を巡る争い。変革を進める江川太郎左衛門に対して、保守勢力の既得権を守る鳥居耀蔵。渡辺崋山、高野長英、高島秋帆らは鳥居によって捕縛される。そんなことをやっている場合ではないのだ。隣国がアヘン戦争でやられているのだ。侵略に備えて西洋砲術を広め、自前で砲を造る必要がある。蛮社の獄で損なわれた人材が惜しい。主に黒船が来る前の10年間の出来事。2019/01/06