出版社内容情報
ローマ帝国の定礎に潜む数々の暴力と死への洞察を通じて,歴史と文化を支えている暴力の支配から脱出して安らかな多様体としての文明創出の道を探る歴史哲学の書。
内容説明
死体の上に定礎された文明―ティトス・リウィウス『ローマ史』をもとにローマ定礎にまつわる数々の暴力を掘り起こして歴史の暗黒を暴き、人類が暴力の支配を脱して第三項を排除しない安らかな多様体としての文明を創出する道をさぐる。歴史と文化の定礎の書。
目次
ローマの栄華―白蟻の寓話
黒と白―被覆
帝国と選挙―死者
排除される第三項
群集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
古代都市国家ギリシャに始まる西洋の哲学は、小規模の政治体モデルの上に築かれ、純粋や普遍を価値とするこの流れは近代にも続いてきた。この点を著者はギリシャ偏重主義と捉えた。シロアリの寓話から始まる本書は、ローマの帝国的な混淆性や多元性を西洋哲学から抽出し、第三項を排除のする暴力と論理でできたシステムの足元に蠢く群集や死者にこの論理の礎に導く鍵を見る。哲学の足元に隠された何かが保存されているという意図を、建築における定礎に譬える著者の記述も、ギリシャの精緻な数学的文体とローマの奔放な文芸的文体の間を行き来する。2024/08/31