出版社内容情報
アーレント以外は黙殺したルクセンブルクのマルクス批判を再評価、世界システム論に発展させたウォーラーステインを始とする系譜学。
植村 邦彦[ウエムラ クニヒコ]
著・文・その他
内容説明
ローザ・ルクセンブルクと世界システム論者「四人組」―アンドレ・グンダー・フランク、サミール・アミン、イマニュエル・ウォーラーステイン、ジョヴァンニ・アリギ―とを思想的な影響関係でつなぐ鮮やかな系譜学。近代世界のジレンマもつれた糸をいかに解くか。
目次
序章 ハンナ・アーレントとローザ・ルクセンブルク
第1章 ルクセンブルク―資本主義の不可能性
第2章 レーニンからロストウへ―二つの発展段階論
第3章 フランク―「低開発の発展」
第4章 アミン―「不等価交換」
第5章 ウォーラーステイン―「近代世界システム」
第6章 アリギ―「世界ヘゲモニー」
終章 資本主義の終わりの始まり
著者等紹介
植村邦彦[ウエムラクニヒコ]
1952年愛知県生まれ。一橋大学大学院博士課程修了(社会学博士)。現在、関西大学経済学部教授。専門は社会思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
13
ローザ・ルクセンブルクは難しさうでまだちやんとその著作は読んでゐないのだが、本書はルクセンブルクの思想の現在における可能性を示すものとして面白く読んだ。副題が「世界システムの思想史」としてあり、ウォーラーステインのやうな世界史の捉ヘ方の源流にルクセンブルクの思想があるといふことが本書の機軸である。資本主義的な経済社会とその外部の支配↔従属関係をルクセンブルクが提示したこと(マルクスのモデルの批判的修正)を踏まヘ、ソ連の公式的な世界資本主義理解とは異なるシステムを明らかにしやうとしたことが説かれる。↓2021/01/09
Haruka Fukuhara
3
ローザってローザ・ルクセンブルクのことか。4人組のうちウォーラ―ステインしか聞いたことなかった。2017/03/04
ひろ
1
ローザ・ルクセンブルクに連なる四人の世界システム論者の系譜と、彼らの示唆するところである来るべき世界の展望を描く本。端的に結末を述べてしまえば、ジェノバで勃興し、オランダ・イギリス・アメリカというヘゲモニー国家を産んできたという意味での資本主義世界システムは終わりを告げようとしており、次なるヘゲモニー国家はもはや現れず、混沌とした時代が長期的に訪れるであろうというもの。経済成長のためのフロンティアを失った世界では、複利というシステム、終わりなき成長という期待そのものが失効する。2019/03/23
学園都市のペンギン
1
主にローザ・ルクセンブルクの『資本蓄積論』、それに影響されてのちに「世界システム」を構築していく学者達の視点から資本主義について論じられた本であった。 全体に貫徹する問題意識として『資本蓄積』の議論がある。簡単に言うと、資本主義は非資本主義的地域を持つことがその存続の条件となるが、しかし非資本主義的地域はいずれ資本主義世界に組み込まれるため、未来においては資本主義は終焉が待ち構えているということである。 これが仮に正しいと仮定した場合、我々はどのようにこの終焉に立ち向かうのか考えなければならないだろう。2018/12/09
Mt. G
1
「資本主義世界経済」に注目したローザ・ルクセンブルクと、彼女に影響を受けた世界システム論者「四人組」(フランク、アミン、ウォーラーステイン、アリギ)についての簡潔・明快な系譜。それぞれの著作へたどって読みたくなります。なお、ローザ・ルクセンブルクも発展段階論(ex. レーニン、そしてロストウ)から自由ではないとは思いますが、それでも彼女の世界を読みとく力はスゴい。あと、議論の流れから言うと、ブローデルやホブズボウムらの議論との関係が気になるところ。2016/07/07