内容説明
豚のもつ茹でから甘鯛の唐揚げまで。はじめに胃袋ありき。りんごを見つけたアダムとイヴの末裔たちは、がまんできずにペンを置き、いつも飢えた魂が、みるみるうちに起きあがる。ちょうど料理もできあがり、ここに窮まる食の饗宴。
目次
作家の食卓
好きな場所、愛した味
作家のおやつ
食卓をめぐるエッセイ
食卓のポルトレ
ことばの御馳走帖
食いしん坊作家たちのアラカルト事典
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
80
作家は己のスタイルにこだわりを持つ。生き方にうるさいのだ。生き方にうるさければ、食事にもこだわる。たとえば、旅先で昼飯を食うとして、目についたもの何でも良いと云うわけにはいかない。あれでもない、これでもないとメガネにかなうものを探しているうち、ついに食べず東京に帰って行きつけの店に入ろうということになるほどややこしい人種だ。そうした人種がどんなものを好んだか、どんな店を贔屓にしたか、どんなことを書き、どんなことを語ったか、そうしたことをひもとくと人となりが露わになる。手本とすべき美質が際だって見えてくる。2013/12/29
れみ
73
作家と食について。なんだろう…やっぱり、物語を書いたりとかそういう才能のある人っていうのは、グルメかどうかは別にして、独特のこだわりがある人が多いのかもしれないなあと思ったり。きれいなカラー写真とともに紹介されているページも心惹かれたけど、三島由紀夫さんがイカとカニが嫌いな理由や“蟹”という字も嫌いだったとか、泉鏡花さんがばい菌恐怖症で餡パンの自分が摘まんだところすら捨てたとか、なんか、そういうちょっとしたところにツボがあったりもした。2021/06/18
♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
61
読みともさんのレビューをみて気になっていたら、図書館で『再読! 日本の文豪』コーナーに並んでいた。作家たちが食べていたメニュー、足繁く通ったお店、創作の合間に頬張ったお菓子など写真入りで紹介。メニューの中には作り方がのっているものもあり、色川流「特製卵とじ」や森瑶子の「ヨロンどんぶり」などつくってみたくなる。巻末の食いしん坊作家たちのアラカルト事典も食への執着ぶりやエピソードが楽しい。江戸川乱歩が生活に困り深夜にチャルメラを吹いて支那そばの屋台を引いていたというのは初耳。食べてみたかったなあ。2019/10/03
たつや
54
様々な作家の食事のメニュー、図書館で借りましたが、立原正秋の朝食から始まり、食事の写真と簡単な著者紹介等の文章で、十数人の昭和に活躍した著者の自宅の食卓や外食メニューはどれも「ちくしょー腹が減る」と叫びたくなる。豪華だったりこだわり、著者の味が出ていて、自分は未読の著者もいたので、その作品を読みたくなりました。2016/11/04
ホークス
49
2005年刊。亡くなった作家の食にまつわる短文とたくさんの写真。小説はあまり読まないので、ちょっとつまみ食い。 色川武大(阿佐田哲也)は、麻雀放浪記や博打物で親しんだ。伊集院静が色川氏との関わりを描いた「いねむり先生」にも感銘を受けた。異様なのに優しい表情。無頼さが滲む食事風景に胸がざわざわする。森茉莉はご贔屓の喫茶店にバターやおかずを持ち込んで楽しんだ。可憐さと激しさの同居した表情に今も緊張する。岡本太郎が幼時から親しんだ浅草のお煎餅はゴツゴツして本人そっくり。種村季弘の嗜好を語る巖谷國士がとても楽しげ2021/01/18