内容説明
ILO(国際労働機関)の設立が第一次大戦終結時に締結されたベルサイユ平和条約中の「第13編 労働」条項に由来しているということを知る人は少なくないが、同条項が成立するまでの経緯、特に当時日本政府がどういう態度で会議に臨んでいたかを知る人は甚だ少ないように思う。当時の事実の経過や先人の貴重な関係記録が時の経つのにつれて忘れられたままに埋れていくことを惜しみ、ここでいわば「時効の中断」をしておく必要を感じたのが,本稿をまとめた動機である。
目次
1 パリ平和会議の開催と日本の参加
2 国際労働法制委員会の設置とその背景
3 国際労働法制委員会における審義と日本政府の対応
4 日英代表団の舞台裏における接触―落合報告
5 平和会議総会における承認と国内における新聞報道
6 当時のわが国の産業労働事情
7 関係者の会議報告と枢密院の審査
8 平和会議以降の機構、法令の整備
9 むすび