出版社内容情報
資産家が住まう洋館に届いた英文の脅迫状と、奇怪な密室殺人――迷宮入りとなった十数年前の事件に四人の男が推理を競う傑作短編「完全犯罪」。著者である加田伶太郎は、日本推理小説の爛熟期に突如として登場、本作を始めとする幾編かの短編小説をして斯界に名を知らしめた――。その謎に包まれた正体は、文学者・福永武彦が創りだした別の顔であった。精緻な論理と遊戯性を共存させ、日本推理小説史上でも最重要短編集のひとつに数えられる、文学全集の体裁を模した推理小説集。
福永武彦[フクナガタケヒコ]
著・文・その他
内容説明
資産家が住まう洋館に届いた英文の脅迫状と、奇怪な密室殺人―迷宮入になった十年以上前の事件を巡って四人の男が推理を競う傑作「完全犯罪」を始めとする、古典文学者・伊丹英典の華麗なる探偵譚。幻の推理作家・加田伶太郎=福永武彦が謎解きの粋を凝らした全八編を収める。精緻な論理と遊戯性を共存させて、日本推理小説史上に於いて記念碑的一冊に数えられる推理小説集。
著者等紹介
福永武彦[フクナガタケヒコ]
1918年福岡県生まれ。東京帝国大学卒。46年に処女作「塔」を発表、54年に発表した『草の花』で作家としての評価を確立する。61年『ゴーギャンの世界』が第15回毎日出版文化賞を、72年『死の島』が第4回日本文学大賞を受賞。79年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
103
ヴァン・ダインは探偵と同道する友人が語り手で作家名、エラリー・クイーンは探偵と作家が同名、そして加田伶太郎は福永武彦の友人の加田が伊丹探偵ものを書くと言う一番手の込んだやり方。本格作家ってこう言う面倒臭い作家設定が好きね。子供が容疑者、犯人と言う話が複数なのは、余程クイーンの某作の衝撃が大きかったのだろう。日本の童謡とアンデルセン童話が重なる「赤い靴」が良かった。悲しい話だけど。殺す必要がなかった訳だから。「完全犯罪」のトリックは作家は実践してないのね。必要ないけど。文章で納得できればいいから。2019/03/23
藤月はな(灯れ松明の火)
93
福永武彦氏が別名で書いたミステリー。坂口安吾といい、谷崎潤一郎といい、文豪と呼ばれる人は結構、ジャンルに拘らずに楽しんで書ける人が多いんだなぁ。序文が「ホームズの手掛けた事件を記述するワトソン君を書くドイル氏」みたいで何だか、可笑しい。そして『海市』などで「執筆時、家庭に何かあったんか、この人…」と心配したのが杞憂だったかのように奥さんに良い意味で頭が上がらない伊丹英典氏というのが貫かれています。何だか、この奥さんへの態度は京極堂みたい。「温室事件」はラストの忠義と気高さに納得できずも圧倒されるしかない2018/06/16
HANA
58
福永武彦が別名義で書いたミステリを収録した全集。坂口安吾もそうだけど、別の畑の人間が書いたミステリって論理遊戯的なものが多い印象を受ける。本書もその例に漏れず初期の物は徹底的に知と戯れた物が多い。トリックや現実的に見てそれは無理があるだろうという設定もあるけど。「幽霊事件」とか後々普通にばれるよね。かつてあった犯罪が語られる表題作もいいけど、個人的には後半の作品「眠りの誘惑」「湖畔事件」「赤い靴」が面白く読めた。しかし虫太郎もそうだけど、「完全犯罪」って題名の小説は現実離れしたトリックが多くて面白いなあ。2019/09/17
ちぇけら
22
福永武彦の書くミステリの優しさと妖しさが、口いっぱいに広がる。ぞくぞくと背筋を這う足音がたまらなくいとおしくて、ページをめくる手が止まらない。人が死ぬ、ということがすごく大切に描かれ、トリックのために人は死なない。人を殺すにはそれなりの動機があってトリックが生まれるんだ。人はふつう人を殺さない。嫉妬、欲求、絶望は終わらない連鎖。その純文学的ミステリに惚れぼれしたけど、これが「全集」であることが残念でならない。2019/02/20
やまだん
11
福永武彦が別名義で書いた短編8つが収録されている。いずれも,1950年代の作品ばかりであり,よく言えば「古きよき時代のミステリ」であり,悪くいえば「古臭いミステリ」。標題作の「完全犯罪」こそ,無駄をそぎ落とした多重解決モノで,トリックが「実現可能?」と思ってしまうものの,それなりに楽しめた。それ以外の作品は,最近のミステリに比べると意外性もそれほどなく,よくできているが,シンプルな作品ばかり。古典と割り切って読むべきだろう。探偵役の「伊丹英典」のキャラクターをはじめ,作品全体の雰囲気は悪くない(50点)。2018/08/11
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