内容説明
柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー小説―柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道由起子に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。要するに作家同士の知恵比べをしよう―という企画は順調に進行するかに見えたが…。問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在事件を赤裸々に綴ったものだった。全面改稿決定版。
著者等紹介
中町信[ナカマチシン]
1935年1月6日、群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら、67年から雑誌に作品を発表。第17回江戸川乱歩賞の最終候補に残ったのが、初長編の『模倣の殺意』である。以降、叙述トリックを得意とし現在に至る
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感想・レビュー
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nobby
122
これはまた隠れた名作。まず中町作品の特徴か非常に読みやすい。過去の作家から売れっ子作家へのリレー小説という展開には惹かれるものの、序盤に描かれる事件は正直退屈。しかし中盤からの様々な追及に引き込まれると、最後にとんでもない仕掛けが明かされる!一捻りならぬ何回捻り(笑)そのプロットやお見事としか言いようがない。何となく気になってた事柄もきれいに伏線回収されている。ご自身によるあとがきのエピソードも感動ですね。2016/01/07
セウテス
65
〔再読〕「散歩する死者」が新装されました。「模倣の殺意」とこの作品の二冊は、叙述作品という形を定着させた意味ある作品です。幾つかの解釈が在ると思いますが、叙述トリックとは本当はAの状態であるものを、文章や表現の仕方に仕掛けをして、Bの状態で在ると読者に錯覚を起こさせるトリックと考えます。クリスティが好んで使用していますが、あくまで作品の中の一部分に使われるトリックでした。中町信氏の作品は、トリックというより作品全体のプロットの巧みさで、叙述作品に仕上がっています。終盤に誰もが、騙されたと感じる作品です。2015/04/19
としるこ
51
★★★★編集者(主人公)の元に、とある作家の作品が渡される。その作品の内容は半年前に実際に起きた未解決殺人事件とまったく一緒の内容であった。なぜ、この作家はこんな小説を手掛けたのか?そしてその時をきっかけに殺人が起こる。犯人は一体誰なのか?…。この作品は少し内容が古典的でしたが、余分な文もなくスラスラ読めました。しかも話が二転三転して、真相が意外な展開で予想を裏切る裏切る。展開が読めない感じが面白かったです。思わずもう一回読み直しました。最後の真相の強引さの突っ込みどころはあるけど(笑)いい作品です。2016/03/17
坂城 弥生
49
読み終わって、現実と小説の境界がわからなくなった。確かに思いもよらない真相でした。2021/03/01
えみ
48
こんな結末を誰が予想できた?この小説を読み出した瞬間からもう作者の仕掛けた罠に囚われている。驚きだけではない、唖然とするこの小説の小説。殺意は小説の中から溢れてくる。毒牙にかかったのは誰だ!犯人は誰だ!落ち目の小説家・柳生照彦から犯人当てを目的とした小説、問題編を預かった「推理世界」の編集者・花積明日子。しかしこの小説、信じられないある秘密が隠されていた。そして柳生の失踪。関連を疑うには十分すぎるほどの連鎖する殺人。どこまでも息つくヒマがない。気だるさと湿った空気が伝わってくるような書味に素直にひれ伏す。2024/10/04