内容説明
『ボートの三人男』で知られるジェローム・K.ジェロームによる異色作品集。心和ませる幽霊小説、冷たく怖い怪奇小説、優しく美しい幻想小説、不思議な現代ファンタジイ、数千年の時を跨ぐケルト・ファンタジイ等々、多彩な味わいの奇譚17篇を収録。
著者等紹介
ジェローム,ジェローム・K.[ジェローム,ジェロームK.] [Jerome,Jerome Klapka]
1859年、スタッフォードシャー生まれ。ユーモア小説『ボートの三人男』で知られるイギリスの作家。ロンドンの貧しい地区イースト・エンドで貧困に苦しむ幼少時代を送った後、十三歳から十五歳のときに両親を相次いで亡くし、学業を諦めて働き始める。十八歳のときに移動劇団に加わるが三年で役者の道を諦め無一文でロンドンに戻り、弁護士事務所の事務員などをしながらエッセイや短篇小説を発表するようになる。新婚旅行のあと発表した『ボートの三人男』(1889年)が評判になったのを機に専業作家となり、小説、エッセイ、戯曲を書き、また雑誌の編集にも携わる。しかし『ボートの3人男』を超える評価を得ないまま、1927年、自動車旅行中に脳出血で逝去
中野善夫[ナカノヨシオ]
1963年、アメリカ合衆国テキサス州生まれ。立教大学理学研究科博士課程修了(理学博士)。英米幻想小説研究翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
79
『ボートの三人男』の著者による怪奇短編集。まだ読んでないけど…。「食後の夜話」こそユーモアたっぷりで楽しいけど、続く諸作品はあまりにも基本に忠実すぎる気がする。表題作とか民話にも似たような話が散見されそうだし。ただ英国の怪奇小説が持つ独自の魅力はここにも健在で、「ダンスのお相手」とか「牧場小屋(セター)の女」とか、類型的だけど独自の空気を醸し出しているし。一方「奏でのフィドル」や「ブルターニュのマルヴィーナ」のようなファンタジックな作品も収録されており、この作家の魅力を十全に引き出した一冊ともなっている。2021/12/07
カフカ
74
「ボートの三人男」で有名なジェロームの、バラエティに富んだ幻想奇譚。 ユーモアのある幽霊譚、容赦の無い恐怖譚、美しい幻想譚、ディストピア、ケルトファンタジーなど様々なテイストの物語が所収されています。 どれも違った味わいで飽きることなく楽しめたのですが、特に好みだったのは『ダンスのお相手』、『新ユートピア』、『二本杉の館』、『四階に来た男』、『ブルターニュのマルヴィーナ』の5篇。 中でも『ブルターニュ~』の神秘的な味わいがとても良かったので、他にもケルトファンタジーを読んでみたいです。 2022/12/14
nuit@積読消化中
74
ユーモア小説『ボートの三人男』の著者の幻想奇譚集!生きてる間にまとまった状態で邦訳が読めたことがもう嬉しすぎる!ボート男といえは1889年、その時代のイギリスといえば切り裂きジャックなど暗鬱とした印象の多い頃、そんな時にこんなユーモアだけなわけがないと思ってましたが、やはりこういった怪奇ものも書いてたんですね〜。本当に嬉しいです。19世紀の幽霊譚や北欧のファンタジーまで幅広く描けるジェローム。どれもこれも面白かったです。巻末の中野氏による解説も丁寧で嬉しい!もっと読みたい。2021/10/02
くさてる
40
かの有名な「ボートの三人男」の著者……と言いつつ、そちらは未読です。どこか古めかしい幽霊譚から奇妙な味や恐怖譚までいろいろあって面白く読みました。個人的に面白かったのは下宿宿にやってきた新入りの男が、住人の運命を変えるささやきを続ける「四階に来た男」、表現者を成功させる不思議な猫を描く「ディック・ダンカ―マンの猫」飾り棚に住む霊にまつわるちょっと愉快で皮肉な物語「ウィブリイの霊」、繊細な妻を理解していない夫が仕組んだ悪戯の恐ろしい結末を描く「蛇」など。粒ぞろいの短編集で、良かったです。2022/01/22
かわうそ
32
怪奇、幻想、ユーモア、ファンタジー、SF(!)といった多彩な要素がちりばめられた贅沢な作品集。中でも幻想風恋愛小説「二本杉の館」とラストを飾るファンタジー「ブルターニュのマルヴィーナ」が素晴らしかった。その他のお気に入りは「チャールズとミヴァンウェイの話」「人影」など。2021/10/11