出版社内容情報
チャールズは切羽詰まっていた。父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男など相手にしてくれない。叔父アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。チャールズは考えた。叔父の命、または自分と従業員全員の命、どちらを選ぶのか。身の安全を図りつつ遺産を受け取るべく、計画を練り殺害を実行に移すチャールズ。快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。
内容説明
九月七日十二時三十分クロイドン発フランス行き。十歳のローズ・モーリーは初めて飛行機に乗った。父と祖父、祖父の世話係が一緒だ。パリで交通事故に遭った母の許へ急ぐ旅であることも一時忘れるくらいわくわくする。あれ、お祖父ちゃんたら寝ちゃってる。―いや、祖父アンドルー・クラウザーはこときれていた。自然死ではなく、チャールズ・スウィンバーンに殺されたのである。
著者等紹介
クロフツ,フリーマン・ウィルス[クロフツ,フリーマンウィルス] [Crofts,Freeman Wills]
1879年アイルランド、ダブリン生まれ。鉄道技師であったが、病を得て長く休養した間に構想した『樽』を1920年に上梓し、好評を博す。著書多数。1957年歿
霜島義明[シモジマヨシアキ]
1958年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
139
★★★★★ 倒叙ミステリの面白さを詰め込んだ傑作。 個人的には『樽』よりこちらがクロフツの代表作だと思っている。 犯人が凶悪な人間ではなく、小市民的な感覚の持ち主なのがミソ。完全犯罪を成し遂げようと計画する人間の心理描写が細かく描かれていてリアリティ抜群だ。 倒叙でもクロフツらしい地道な捜査は踏襲されている。更に逮捕後の法廷シーンがまた出色の出来栄えで、検察側と弁護側の弁論の応酬が(やや弁護側に物足りなさはあれど)実に素晴らしい。 そしてラストのフレンチの絵解きがクライマックスを彩る。最高である。2019/12/03
ケイ
136
なんと、書かれたのは1930年代。確かに、殺しの動機につながる企業の苦境は世界大恐慌後の事だが、現代のバブル後やリーマンショック後にも置き換えられそう。検死も本格的だし、違うのはDNA鑑定や携帯電話を持っていないくらいに感じる。さて、内容はといえば、コロンボシリーズのように犯人も動機も分かっている。それをやり通せるのかどうか、だ。やり手の警察側が追い詰めていく話は面白いが、最終章は些かハナについたかな。2019/05/30
森オサム
69
倒叙ミステリーの古典、1934年の作品。まずまず面白かった。犯人が犯行を決意して実行するまでを丹念に描き、完全犯罪が成功したかに思われる。その後警察側の地道な捜査が見られるか?、と思いきや、突然の逮捕!、そして場面は法廷へと移っていく。これはかなり意外な構成で、フレンチ警部の推理は、最終章にまとめて披露される事になります。倒叙物は、犯人が徐々に追い詰められていくスリルが魅力ですが、本作は犯人側の心理の動き、法廷場面の緊張感に読み応えが有った。いつの時代も、動機は金と女。しかしなんでこんな女に、哀れな男…。2020/07/10
星落秋風五丈原
49
「モーリーは初めて飛行機に乗った。父と祖父、祖父のお世話係が一緒だ。パリで交通事故に遭った母の許へ急ぐ旅であることも一時忘れるくらいわくわくする。あれ、お祖父ちゃんたら寝ちゃってる。―いや、祖父アンドルー・クラウザーはこときれていた。自然死ではなく、チャールズ・スウィンバーンに殺されたのである」えっ何ですかそのノリは。孫娘が祖父の第一発見者で、後ろの説明で犯人まで明かしてしまっていいの? いいんです。いわゆる本作は倒叙方式。最初から犯人がわかっている刑事コロンボスタイルなのです。2021/05/03
たぬ
40
☆4.5 これは確かに名作!(それでも5点満点にはしない厳しい私) 従弟に危険が及ぶのは避けたいどうしようどうすればいいんだとぶちぶち悩んだり老い先短い年寄りだし殺そう多数の犠牲より一人の犠牲だとクズすぎる結論を出したりヤベェでっかい音立てちゃったよと心臓バクバクさせたり、犯人の細かな心理描写が実に面白い。手間暇かけていろんなアリバイを仕込んだけどフレンチ警部のほうが一枚も二枚も上手だったね。2022/10/14