出版社内容情報
この呪いも、縛めも、わたしたちが解く。
『感応グラン=ギニョル』の著者、
深化と進化の第二作品集。
解説=高原英理
わたしはこれから、あの子について綴る。けれどもそれは、彼女の生き方を讃美するためでもなければ、己の過ちを悔悟するためでもない。ただひとえに、武器を造り上げるためにこそ、わたしは書く――AIとファッション、古典落語と幽霊譚、オリエンタリズムと搾取、VR空間と魔女狩り……SFと幻想の融合によりファンタスマゴリックな世界を紡ぎ続ける『感応グラン=ギニョル』の著者による、進化と深化の第二作品集。
■目次
「感傷ファンタスマゴリィ」
「さよならも言えない」
「4W/Working With Wounded Women」
「終景累ヶ辻(しゅうけいかさねがつじ)」
「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」
内容説明
十九世紀末のフランス、パリ。職人ノアは故人の姿を見ることができる特別な幻燈機の製作を得意としていた。新たな依頼人は、鏡だらけの奇妙な屋敷で暮らすマルグリット。五年前に亡くなった彼女の妹シャルレーヌの過去を読み解くうち、ノアは姉妹の秘密に呑み込まれてゆく…。SFと幻想が融合した世界を紡ぎ続ける著者、待望の第二作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
56
人物の生き様・思考をなぞる、写し見のような魂を人は「偽物」と嘲る。だけど、それもまた、数多くいる「私」の一面でしかないのに。表題作のラストに某小説のある事実を思い出しつつも、望みを叶えたのに自己崩壊する者の脆弱さに憫笑を漏らさずを得なかった。また、表題作の冒頭でベンヤミンの『パサージュ論』が読みたくなった。「さよならも言えない」はラストは痛烈だ。私も「妥協することで生きやすくなった今の自分は、嘗ての自分を裏切っているのではないか」、「嘗ての自分はこんな私を唾棄する存在として扱っただろう」と思う事があるから2024/08/20
ひさか
27
書き下ろし感傷ファンタスマゴリィ、2022年9月東京創元社Genesisこの光が落ちないように刊4W/WokingWithWoundedWomen、2019年10月創元SF文庫時を歩く刊終景累ケ辻、2021年12月紙魚の手帖vol.02(2021年12月)刊ウィッチクラフト≠マレフィキウム、の5つの幻想SF短編集。いずれも意識、無意識、異能、それぞれの認識が何かに作用して起こる現象と社会的な認識の対比と影響が描いてある。アイデアには感心するが展開が難解なわりには着地点に工夫がなく共感できなかった。2024/07/31
あおでん@やさどく管理人
19
「感応グラン=ギニョル」以来の2作目。読み始めはとっつきにくさもあるが、読んでいると少しずつ物語が見えてきて引き込まれる文章が魅力(それでも難しいものもあるが)。前作よりも現実の社会問題を織り込んだ物語が多い印象。2024/10/07
rinakko
18
とてもよかった。まず耽美で残酷かつ甘苦い毒滴る作風が好みで堪らないのだが、人の嗜虐性や暴力、どす黒い憎悪(例えば人々を“魔女狩り”へと駆り立てるものの正体)をきっちり描く筆致にも痺れる。表題作では“幽霊とは思考の産物” という件からの、己が己であることの確かさがぐらぐら揺るがされ、自己確立の脆さを突き付けられる展開が頗る響いた。「4W」はシスターフッドの物語としても読めるしそこが好きでもあり、「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」で見据えているものは性別に関係なく誰もが考え続けるべきことなのだろう…とも思う2024/05/17
蒐
16
今一番推しの作家さん。幻想×SF×百合という、読み手を選ぶ作風が私にはとても刺さる。5編からなる短編集であり、どれもバッドエンドではないもののハッピーエンドにはほど遠く、だけど痛みを感じるその余韻が愛おしい。お気に入りは「さよならも言えない」。ファッションが点数化され誰もが自分に最適な装いを身に着けることが良しとされる世界で、衣装文化を管理する側の女性と、独自の「カワイイ」を貫く少女の関係性が描かれている。遅咲きの青春物語かと思いきやラストで心を抉られた。他の作品も全部心に響いたけど、語るには文字数が〜!2024/07/07