出版社内容情報
「人生の最高の一瞬」を切り取って
読者に差し出そうとする強い意志。
これこそは「青春小説」の証しだろう。(解説より)――飛浩隆
第12回創元SF短編賞受賞作にはじまるデビュー作品集
意識の転送技術を濫用し、危険で違法な〈動物乗り〉に興じる若者たち。少女の憂鬱な夏休みにある日現れた、""影""たちをつれた男の子。出生の〈巻き戻し〉が制度化された世界で、過ぎ去りし夏の日の謎を追う男性。限りなく夏が続く仮想現実世界で、自らの身体性に思い悩む人工知性の少年少女――夏を舞台とする四つの小説に、青春のきらめきと痛みを巧みに閉じ込めた、第12回創元SF短編賞受賞作を含むデビュー作品集。
■目次
「射手座の香る夏」
「十五までは神のうち」
「さよなら、スチールヘッド」
「影たちのいたところ」
内容説明
寂れた島で過ごした夏、記憶の中で鮮やかさを増す夏、限りなく続く仮想の夏―夏を舞台とする四編に、青春のきらめきと痛みを封じこめた、第十二回創元SF短編賞受賞作を表題とするデビュー作品集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほたる
13
あぁSFって面白いなって思わされる一冊。登場人物同士の関係性の描き方が情緒溢れるものになっていて、それがなぜそのように描けるのかはその世界観がそうさせている。「影たちのいたところ」冒険譚のようで少女のワクワクする気持ちが伝わってきてこちらも楽しい気持ちになる。 「さよなら、スチールヘッド」最もSF色が強くその幻想的な語りにうっとりとさせられる。「十五までは神のうち」少年少女の想いが謎が解かれるとともに明かされる。そしてそれはSFの設定があるからこそこの描き方が出来る。凄まじい。2024/02/29
本の蟲
10
表題作は創元社SFアンソロ『GENESIS』で既読だったが、かなり内容忘れていた。作業用ロボットや動物に意識を転送する技術と、仲違いした旧友、家族になりきれなかった若者の別離。余韻を持たせるラストだが、SFガジェットの扱いが背景どまりでやや不満。同様にAIとゾンビと意識についての「さよなら、スチームヘッド」も冗長に感じた。ファンタジーに振り切った「影たちのいたところ」。極小タイムトラベルで現実になった反出生主義をめぐるミステリ「十五までは神のうち」は悪くないが、全体的に刺さる作風ではなかった2024/03/20
ツバサ
7
設定、シチュエーションが魅力的だからこそ登場人物の感情がよく伝わってくる短編集でした。SFって良いなと思わせてくれる作品。個人的には十五までは神のうちが好きでした。そんな設定を!?からの隠されていた真実を覗くドキドキ感が堪らない。2024/03/08
イツキ
6
SF設定と青春の甘苦さややり切れなさが見事に調和した短編集でした。特に「十五までは神のうち」が良かった、極小のタイムマシンの実用化に伴い15歳を迎えた子供に出生を追認する権利が与えられた世界の話。突然子供が消え記憶だけが残された親や周りの人間の苦悩、それを望まざるを得なかった子ども自身といった事柄も印象的ながら、記憶を頼りに故郷を巡りながら思い返される主人公の子供時代の記憶の鮮やかさと美しさが非常に印象的でした。2024/04/20
kuragemaru
5
「飛ぶ教室」佳作時代から注目していた著者のデビュー作。ワックワックで読んで、満足。4編の中編に共通しているのは「夏」と「青春」。どの話も世界観がとても好きだが、それだけに終わり方が唐突に感じられる。以後は読み手に委ねる、余韻、作者の美学、もろもろあるが、「この先が読みたいんだよ~」とジタバタしてしまった。特に好きだったのは「影たちのいたところ」。SFではなく、幻想小説、ファンタジーで、この設定でガッツリと長編を読みたい。松樹さんは、児童文学に向いているんじゃないかなあ。2024/03/04