出版社内容情報
女性差別的な職場にキレて「妊娠してます」と口走った柴田が辿る奇妙な妊婦ライフ。英語版も話題の第36回太宰治賞受賞作が文庫化! 解説 松田青子
内容説明
「だから私は嘘を持つことにしたの」―日々押し付けられる雑務にキレてつい「妊娠してます」と口走った柴田が送る奇妙な妊婦ライフ。第36回太宰治賞受賞作にして、昨年刊行された英語版がNYタイムズやニューヨーク公共図書館の今年の収穫に挙げられるなど話題となり、現在、世界14カ国語で翻訳進行中の鮮烈デビュー作が待望の文庫化!
著者等紹介
八木詠美[ヤギエミ]
1988年長野県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2020年「空芯手帳」で第36回太宰治賞を受賞。同作は現在世界14カ国語で翻訳が進行しており、2022年8月に刊行された英語版は発売まもなく増刷し、ニューヨーク・タイムズの今年の収穫に取り上げられるなど話題となった。2023年長編第二作となる『休館日の彼女たち』を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
270
2020年の第36回太宰治賞受賞作の文庫化出版です。男ばかりの職場で唯一の女子社員の34歳・柴田は何でもかんでも雑用を押し付けられるのに嫌気がさして「私、妊娠しています」と宣言すると途端に周囲の態度が劇的に変化して行きます。本書を最後まで読んで感じたのは、これは読者の感性に解釈を委ねるタイプの小説だという事ですね。何が虚偽で何が真実かの答によって全く異なる解釈が可能なのですね。でも確実に言える事はヒロイン柴田の職場に対する苦々しい不満の思いだけは疑いのない真実ですので、男性社員は猛省すべきだと思いますね。2023/03/11
はっせー
80
名もなき仕事や家事にモヤモヤしたことがある人に読んでほしい本になっている!仕事場の応接室。そこに置きっぱなしにされたコーヒー。それを片付けるのは言われてはいないが決まった人がやっている職場をあると思う。この本はそんな職場に働く主人公柴田さんが不意についた嘘から始まる物語。妊娠したのでコーヒーとタバコの匂いがつわりにくる。その一言から柴田さんは偽装妊娠生活を送ることになる。そこからの柴田さんは無敵に等しい。スターをとったマリオのように。でも心は少しモヤモヤしている気がした。おもしろかったのでぜひ読んでほしい2023/04/13
syaori
56
郵便物やお菓子を配る、来客に茶を淹れるといった「名前もない」仕事に嫌気が差し、妊娠したと嘘をついた女性が主人公。この物語が教えてくれるのは、妊娠していないのに妊娠したと言うように、芯は空でいいから自分を担保できる嘘(秘密)を持つことの大切さ。主人公は自分の嘘(胎児)を守るために自分に押し付けられる雑務を断り、その空芯から紡がれる物語により、自ら茶を淹れたりと周りが少しだけ変化する。それは絵空事かもしれないけれど、本書が見せる、嘘でもいいから自分だけの場所を持つことの豊かさと可能性に勇気をもらうようでした。2025/04/01
ゆきらぱ
34
日々押し付けられる女性社員ならではの雑務を避けるために柴田が取った行動は、妊婦になること。これは妊婦さんという立場の一種の社会的利用か?この本の趣旨としては皮肉なことにならないか?(女性が女性を利用)しかし、男性社員でありながらにして男性らしい発言はしない東中野さんの存在がそれを良い加減にしてくれている。この東中野さんがいいなと思った。前の会社の雪野さんの事を「(雪野は)みんなが気づかないうちにことを進めている。でも本当は多分、みんなそうだ。雪野は割とそれを口にしてくれる」と気づくところの余裕も良かった 2023/04/26
olive
30
お土産配り、コーヒー出し、給湯室の掃除に電子レンジ掃除etc...。名前のない仕事に嫌気がさし我慢の限界!あなたならどうしますか?①嫌々やり続ける。②上司に訴える。③休暇を取って一旦リセット。④こんな会社辞めてやる。私ならまずは②の上司に相談。ぬぬぬ!私の考えなんて生ぬるかったのか?なんと!本書の主人公、柴田さん独身34歳は”妊娠”してます。と口走る。読み手の私は柴田さんの飄々とした態度とは裏腹に、いつバレるのかとヒヤヒヤだが、そんな作品じゃないのを確認したい人は読むべし2025/02/08