出版社内容情報
文豪、獅子文六が作家としても人間としても激動の時間を過ごした昭和初期から戦後、愛娘の成長とともに自身の半生を描いた亡き妻に捧げる自伝小説。
内容説明
文豪、獅子文六が「人間」としても「作家」としても激動の時を過ごした昭和初期から戦後を回想し、深い家族愛から綴られた自伝小説の傑作。亡き妻に捧げられたこの作品は、母を失った病弱の愛娘の成長を見届ける父親としての眼差し、作家としての苦難の時代を支え、継娘を育てあげ世を去った妻への愛、そして、それら全てを受け止める一人の人間の大きな物語である。
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
33
獅子文六は、正直だから偉い。無理しないから素晴らしい。これを自然体と言うのだろうか。あとがきにもあるとおり「娘と私」ではなく、「前妻と私」である。千鶴子さんが、最高の奥さんだということを読者の胸にじーんと伝える物語。夫婦に歴史あり。今、考えると「悦っちゃん」の方が「娘と私」だな。2018/08/09
シュラフ
25
しばらくみかけなかった本なので復刻版なのだろう。家族の絆、夫婦愛、親子の関係を考えるにあたり、とても良い本なので一読をおすすめしたい。自分がこの本を読んだのは今から30数年前の高校生の頃。いま夫となり、親となってみて、この本をあらためて読んでみると、ひとりの男の成長の物語といった読み方になった。かなりの赤裸々な私生活を覗いてみると獅子文六はとても我儘で未熟すぎるのだが、妻や娘との人間関係の中で獅子文六自身が色々と教えられて、夫婦の情愛、そして親子の愛情というものを学んでいく様が分かるのだ。2015/02/02
ヨーイチ
23
いやぁ長かった。まあ読了せねばって類の物でもないから、この詠嘆も不要なのだが。私小説とか自伝って小説家獅子文六にとって最も縁遠い物だと思うのだが、その訳は最後の付録で語っている「娘と私」と言う題名は恐らく人生で最初に覚えた大人の小説の題名かも知れない。TVでチロリン村やブーフーウーと共に認識したのだと思う。同様に獅子文六も名前だけが記憶され、以来半世紀を経て今対面している。人間描写が達意で月並みを脱し正確なのは気持ちが良いくらいで、散文が上手いってこういう事なのだと思う。続く2015/04/09
しんすけ
21
十五歳の時に読んだ。カラマーゾフと前後するような読書だったから、よく覚えている。 読みながら将来もし結婚することがあったら、女の子がほしいと思ったものだ。 それくらいにここに登場する少女麻理は魅力的なのだ。 しかし今回の再読での印象は、かなり違った。 麻里よりも後妻になった千鶴子に視点が置かれている印象が強かった。 千鶴子が麻理を愛おしむ姿が健気でもあり、悲壮感さえ感じさせる。 物語は千鶴子の死を経て麻理の結婚式で閉じられる。2022/08/07
fwhd8325
21
主人公の娘は、私の両親と同じ世代だが、その生活は全く異なる世界。いわゆるハイカラと言うことでもないだろうが、山の手と東京の外れでは、生活感は全く異なる点が明らか。それだけ、東京と言えども、距離が広かった時代の物語。こんなに長い物語とは知らずに手にしたが、一生懸命読みました。2015/06/06