内容説明
日本仏教史および文化史の上に偉大な足跡を残している巨人・弘法大師空海ほど、さまざまな伝説・俗信に彩られた謎の人物は稀である。本書は、空海にまつわる神話を洗い落とし、真に仏教者・思想家・詩人として生きた生涯を再現して、彼の求めたものは何であったのか、その軌跡はどうであったかをあざやかに浮かび上がらせる、空海伝の定本である。
目次
第1章 生きている空海
第2章 幼少年時代
第3章 三教指帰の述作
第4章 入唐まで―20代の空海
第5章 唐における空海
第6章 帰国後、何をしたか
第7章 高雄山時代
第8章 高野山の開創
第9章 東寺の経営
第10章 社会的活動
第11章 教団と弟子たち
第12章 文筆活動
第13章 高野山における入定
第14章 日本仏教史上より見た空海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
42
伝説上の「弘法大師」ではなく、史料批判を加えながら実像の「空海」を描き出しています。特に最澄と対比することで空海の特長が浮かび上がってきます。完璧な師匠である空海の下ではあまり弟子が育たなかったのか、それとも仏教理論よりも加持祈祷にのめり込んでしまったのか、後継者といえる人物がいなかったことがわかります。また、奈良仏教と対立しながら天台宗を確立していく最澄と密教によって奈良仏教を包摂してしまう空海など興味深い視点も提示してくれます。50年以上前に書かれた本ですが、良書だと思います。2020/05/21
テツ
26
空海の生涯。創作された物語や伝説は排除された彼が真に歩んだ人生の形。思想や哲学は脳の中でだけで熟成され生まれてくるものではない。それを生み出す個人が身体で会得した森羅万象が、生まれてから歩いてきた道程がそれを強く鋭く鍛え上げていく。空海が己の思想を花開かせるためにはこの人生が必要だったんだろうなと思いながら読み終える。密教的な宗教観については何も知らない素人だけれど彼の残した言葉の数々の中にとても好きなものがたくさんあるので、それを生み出すために必要だったであろう足跡を知ることは楽しかった。2019/12/08
ピンガペンギン
14
空海について知るには、司馬遼太郎の「空海の風景」とこの本がいいと読み(松岡正剛さん)始めたが、150Pでひとまず置く。教科書のような記述なので、少し退屈してしまう。客観性を失わないような書き方のためだろうか。根本資料に基づいた記述。空海は最澄と同時代で同じ遣唐使船に乗って学んで帰国しているのもあり小説でも二人が絶交するまでがリアルに描かれていた。この本に「空海のような寛容の精神」と書いているが、先に司馬遼太郎の小説を読んだため、イメージにずれが出来てしまっているのもあり、寛容?という感じに思えた。2023/04/22
moyin
7
空海の実像を知りたいから、この一冊を読んだ。少し分かったような気がするが、謎に包まれる部分にさらに好奇心が燃える。2024/08/18
sayzk
6
うちの近所にも「弘法大師」さんが立ち寄ったとされる井戸がある。わが国あちこちで伝説があり、たしか今昔物語では人を呪術で殺した話まである始末。そんな空海さんの「ちゃんと」した本です。空海の思想や哲学より客観的に歴史上の人物としての面を主体にした内容。頁数の割には中身は濃い本です。文献の漢文が書き下し文にはなってても現代語訳にはなってないわ、知らん仏教用語が出てくるわ、易しい本ではなかったです、私には。しかし、最澄と空海の私のイメージがまったく反対でした。今度は最澄のなんか良い本ないかな。2014/05/27
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