内容説明
先頭を行く長門を突然、米艦を襲ったのと同じ異常な感覚が襲った。巨大な刃物で艦底を引きちぎられる感覚である。巨大なナイフと化したオーデンの艦橋が、長門の艦底からトップデッキまで引き裂いたのである。「機関室浸水、各部浸水！」長門から悲痛な報告が送られてくる。しかしどうしようもない。ギリギリという不気味な音がとどろいた。長門の艦首と艦尾が持ち上げられ、次の瞬間、およそ４万トンの巨体がくの字になった。そのままずぶずぶ沈んでいった。山本も宇垣も黒島も、自分の目が信じられなかった。砲撃も浴びずに軍艦がこうやって沈むなどとは、前代未聞だ。
著者等紹介
田中光二［タナカコウジ］
昭和１６年２月１４日、京城生まれ。早稲田大学第二文学部卒。『黄金の罠』で第１回吉川英治文学新人賞受賞。現在、和歌山県白浜在住
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