出版社内容情報
聖書につぐ、全世界で最も愛読されている名著の全訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウリツィウス
20
【『天路歴程』】「新約聖書」の紡ぐ挿話を語るジョン・バニヤン、古典主義における神話主義を確立しただけではなく「本質」つまりルイス以降の文明史論述を求めていくのだろう。古典主義ではなく新約主義、英文学史上における聖書総覧をミルトンとの共鳴により導き出した功績は大きい。カール・バルト/アウグスティヌス/使徒パウロ書簡の円環を紡ぐ講解記録、『天路歴程』=『失楽園』再臨世界、よってバニヤンは神学史世界を再記録させていく。C.S.ルイスの求めた「救済」はここにも生き続けた。無神論/汎神論に終りを告げる。:使徒ヨハネ2014/02/15
マウリツィウス
14
【講解書の名は歴程】バニヤンの天路歴程は迷妄とされた旧約聖書信仰=旧教残存を物語図式化し象徴化した方法論も兼ね、その性質に則った伝説は聖人崇拝批判も実質含める。つまりルター『自由』の図像解釈版とも定義可でありシェイクスピア英文学のルネサンス起源を批判し尽す。ミルトン同様反証を明示した点で実に対抗信仰を明確に示した新教神学書の一分類で、プロテスタントの啓示は聖書資料に該当しない外典文書を除外排斥しギリシャ幻想を駆逐、文学の特異性を聖書を始点に据えた告白録にして信仰問答、基準書、講解、実側面と美的側面が共存。2013/05/28
マウリツィウス
13
【新約聖書「外典」補遺】バニヤンの歴程とは新約聖書の求道した信仰ヴィジョンを異なる様相へと変えた異端との対立を緩和してきた優しい心、カフカの本来持ち合わせた厭世観とは違い、新約=従来西洋遺産を求める誠実がたとえ人を犠牲にしてでも、或いは自分を犠牲にしてでも成したいこと、それこそが外典資料を補足する形式の「歴程」、信仰者が殉教者である事実を暗示/明示した「信仰改革」=ルターの改変項目は清教徒として信仰を変える意思と覚悟、信仰と葛藤と殉教を必然に孕む「改革」成さねばならないこととは外典との共存を滅する決意項。2013/06/01
マウリツィウス
12
現代キリスト教神学の礎となったジョン・バニヤンによるキリスト教の隠喩世界は失楽園の迷走したペシミズムを見破り神曲の保守世界像を同時に遍歴形式の説話へと置き換えていく。極めて新しいのはシェイクスピアのバロック表現に依存した美的迫力への快楽を乗り越え、従来の論理性・平明性を取り戻し古典的価値としての新約聖書に準ずる定式を利用、英国聖書の復権にも貢献する文体論を確立したことにある。カフカなど無神論的不条理劇との相違点の存在は新教発祥の文学像を革新し、エンデにも追随する寓意の誘いを造り上げていく。試練と救済の門。2013/05/03
マウリツィウス
11
【『ヨハネ福音書講解』】教父の求めた救済像を実質継承したバニヤンは虚構神学像をダンテに発見、ミルトンによる異端発生危険性を考慮、その結果をルイスにつなぐヨハネ福音書講解がこの『天路歴程』。新約聖書像を明晰かつ冷静に解析した新教像はミルトンの暴虐可能性を失われた楽園に見出す。しかし彼の憂慮こそがこの歴程にて復楽園二重化を果たし改革像を実質共有した。講解記録を意味するこの「神学書」は従来フィクション分類に該当せず資料性を重視、つまりその参照性を有する側面が「キリスト教文学」であり、旧約/新約聖書の系譜を記録。2013/06/07
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