内容説明
日本に自生した人間形成の方法のひとつに「生活綴方」とよばれているものがある。それは、一九三〇年代の地方社会に誕生した。この方法の小学校での担い手が綴方教師である。本書は、かれらの誕生の歴史的構造を明らかにしたものである。どのようにして、なぜ、かれらはこの時期に現れたか。かれらは何者なのか。その誕生の由来をたどることを通して、本書は、日本の近代化の隠されたるエスノ・ヒストリカルな過程を明らかにしてゆく。著者は、この書を通して、いわゆる生活教育論争に対してひとつの答案を書くと共に、「生活綴方」の戦後概念の再検討をせまる。
目次
序論 生活綴方の概念と歴史研究の課題
第1章 生活綴方の原型(方法の検討;二〇世紀初期の綴方運動;教師野村芳兵衛;小砂丘忠義の出立)
第2章 雑誌『綴方生活』創刊の史的構造(本章の課題;『鑑賞文選』誌の立脚点;童心主義児童観の解体;アナ・ボル論争と『鑑賞文選』誌)
第3章 綴方教師の誕生(『綴方生活』第二次同人宣言;「宣言」を支えた人づくり心性)