内容説明
20世紀前半、故国ハンガリーの悲劇に巻き込まれていく孤高の天才彫刻家、ワグナー・ナンドール。二度の敗戦、冷戦、動乱、政治犯として指名手配―希望の欠片すら見出せない過酷なまでの運命。それでも作品を刻み続けた彼の胸に深く静かに流れていたのは日本の武士道精神と、妻・千代の温かさだった…。東欧の哀しく激しい時代を生き抜いた男の、愛と信念を描く感動ノンフィクション。
著者等紹介
下村徹[シモムラトオル]
1930年台北市生まれ。1953年慶応義塾大学文学部卒、大同通商(株)に入社。1956年ニューヨークに赴任、その後22年間米国で勤務、現地法人の社長を経て本社代表取締専務、一部上場大同工業(株)の海外事業担当取締役などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ayako H
1
友達から。出だしは暗くて悲しいことが多くて、友達はこの本のどこに魅力を感じたんだろうと思いながら読み進みました。そしてちょうど真ん中ぐらいから物語の様子が変わっていき、後半は一気読みでした。このような彫刻家がいたことも知らず、益子にアトリエを構えていただなんてまったく知らず。益子にいってみたくなりました。2018/01/26
古本虫がさまよう
1
ハンガリーで由緒ある一族の子供として生まれたワグナーは、幼少の時に祖父から日本の新渡戸の『武士道』を教えられ読み、日本への憧れを抱く。日本人と結婚し日本に移住。「共産主義」という嵐に翻弄されたワグナーは、穏健な人柄でリベラルな優しい性格であった。「自由の国に生まれた者には、理解出来るまい。私たちが、繰り返し噛みしめる自由は、全てに勝る贈り物であることを」-- 自由世界で、貧困だの何だのと騒いでいる人達の語る「貧困」と、ワグナーが体験した「自由なき貧困」と、どっちがマシなのだろうか。2017/12/11
yearning for peace
0
帰化したワグナー・ナンドールの生涯。映画になりそうな波瀾万丈の人生と不屈の信念に、深く驚嘆。すでに今年の五指に入りそう。2009/01/20