出版社内容情報
警視庁刑事・獅堂は、寒村で少年と出会い、未来予知の研究している“星詠会”で起こった殺人事件の真相を探るが――。
内容説明
被疑者を射殺してしまったことで、一週間の自主謹慎に入った刑事の獅堂は、故郷の村を訪れている。突然、学ランの少年・香島が、彼の慕う人物が殺人事件の犯人として容疑をかけられている、と救いを求めてきた。殺人の一部始終が記録されている証拠の映像は、紫水晶の中にあり、自分たちはその水晶を研究している“星詠会”の研究員であると語るのだが―。
著者等紹介
阿津川辰海[アツカワタツミ]
1994年、東京都生まれ。東京大学卒。2017年『名探偵は嘘をつかない』が光文社の新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」の受賞作に選ばれ、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
136
相性が最悪の未来予知と本格ミステリを組み合わせたアイデアは面白いが、何でもありのSF的展開に行かないギリギリの範囲内でフェアな謎解きを成立させるには細心の注意が求められる。予知能力を持つ星詠師が現代日本で存在できる背景を念入りに書き込んだおかげで、ありがちな嘘っぽさを回避できた。死後の出来事は予知できない制限が推理のカギとなり、星詠師兄弟の周辺で起きた殺人事件を解明していくプロセスは鮮やかで独創的だ。ただ、これだけ詳細に設定しながら犯行動機が俗っぽい。予知能力の根源に絡む驚愕のドラマが出れば満点だったが。2022/08/26
おたま
49
紫水晶の力を借りて未来を予知できる「星詠師」。大星詠師の石神赤司は、息子の石神真維那によって拳銃で殺害されることを予知する。偶然この星詠師たちの住む未笠木村を訪れた刑事・獅堂由紀夫は、真維那が殺害犯であることに疑念を抱き、独自に調査を始める。そして、見えてくるのは、複雑に入り組んだ過去の人間関係であり、水晶による予知に仕組まれた精緻かつ常識を超えた犯罪計画だった。非常に精巧に組み立てられた物語であるが、どうもその全体像の提示に急なあまり、文章が追いついていない。台詞や叙述が陳腐で、読むのが辛いのが残念。2022/03/12
坂城 弥生
43
オカルト色はそんなに強くなかった。2022/02/09
星群
41
注目している阿津川さん初期の作品。水晶が鍵となる事件。全体的には読みやすいんだけど、犯人解明の部分は若干難しかった。人の気持も難しい。残念なのが古典ミステリに疎いので、随所に散りばめられているというアガサ・クリスティのオマージュが解らないということ。解説がやっぱり注目している斜線堂さんってとこもツボである。2022/09/02
うまる
39
決定された未来という設定を活かしたロジック満載で、最初から最後までとても面白かったです。思考好きにはかなりオススメの1冊。現在と過去の絡みはもちろん、それぞれの未来を見る事でのパラドクスが凄いです。特に動機と犯罪の○○はこの設定ならではで面白かったし、犯罪動機と各々の行動動機も良くできていました。感心した所を上げたらキリがないです。一体どこから話を考えるんだろうと創作のプロセスも非常に気になりました。もし自分が作家志望なら、この本を読んで頭のデキの違いに絶望しただろうから、読み専で良かったと思いました。2021/10/26