内容説明
ドタバタ劇は一気に加速する。“ぼく”アルカージーは、臨終の床にある戸籍上の父マカールと出会い、その数奇な放浪譚と信仰に清冽な衝撃を受け、「復活」に向かう。謎の手紙をめぐる陰謀、父ヴェルシーロフとの熱く長い会話。もつれる愛の行方、驚愕の結末…。全3巻、完結。
著者等紹介
ドストエフスキー,フョードル・ミハイロヴィチ[ドストエフスキー,フョードルミハイロヴィチ] [Достоевский,Ф.М.]
1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき日々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
121
3巻本の3(完読) ん~、失敗作という評判が高いこれですが・・やっぱ。失敗作ですね。登場人物みんな変。スラップスティックというか、破綻してます物語。ただでさえ名前が多いロシア人なのに、途中で名前が変わってる人もいて、誰が誰やら。自分の頭が心配になりましたが、後書き読んで、作者の間違いらしいということで納得2024/09/06
Gotoran
44
草稿段階でのタイトルが「混沌」だったというのが納得できるような大ドタバタ劇だった。主人公〈ぼく〉アルカージーは、臨終の床にある戸籍上の親マカールと出会い、その数奇な放浪癖と信仰に清冽な衝撃を受け、「復活」に向かう。謎の手紙をめぐる陰謀、父ヴェルシーロフとの熱く長い会話。もつれる愛の行方、……。主人公による一人称の手記として語られているため、登場人物の激しい心の動きに主人公の激しい心の動きが重なりあっていることから、非常に分り辛く感じた。4番目に出されたドストエフスキーの後期五大長編作品を読んでみた。 2024/10/20
ケイトKATE
31
ドストエフスキーとって、父親は人生に大きな影響を与えたのだろう。第3巻(第三部)では、ようやく登場するアルカージーの戸籍上の父親マカールが死の床から伝える言葉は、ドストエフスキーにとっての理想の父親を表現したかった。一方で、アルカージーに語るヴェルシーロフの言葉は、近代と出会ったロシア人の苦悩を語っているように思える。アルカージーはドストエフスキーの分身であるとすれば、『未成年』は早く亡くなった父親へに宛てた手紙と読み取れる。父親と息子の問題は、『カラマーゾフの兄弟』でさらに踏み込むことになるが。2023/04/05
みつ
26
最終巻では、戸籍上の父マカール・ドルゴルーキーと実の父ヴェルシーロワの長い語りが強い印象を残す。二人も放浪の日々を送っており、マカールは素朴な性格に聖性を感じさせ、ヴェルシーロワは西欧滞在中の体験からロシアがヨーロッパ全体に果たす役割を熱く語る。この二人によって「未成年」の語り手アルカージーの未来が示唆されるかと思いきや、彼の隠し持つ手紙を巡り読み手は改めて混沌の中に。一人称で語るがゆえに、主人公は幾度も他の人物たちの、いわば言葉による対決場面を盗み聞きするという、ある種窮屈な手法が採られているが➡️2024/06/13
ひと
12
アルカージーの法律上の父が現れるがやがて老衰。実質的な父のヴェルシーロフはこれまでの生き方を反省するが自殺未遂。2組?の政略結婚のようなものも破談に。最終巻はますます混沌して内容は半分も理解できませんでした。しかし、「結び」で未来のためにはこの時代の無秩序とカオスを手記に残しておくべきだ、とわざわざ記載があり、この小説が書かれた理由だけは分かった気がしました。2023/05/23