内容説明
革命の進行するさなかに書かれ、理性を絶対視した過激な改革を宗教、財政、軍事面にいたるまで痛烈に批判。その後の恐怖政治とナポレオン登場までも予見した。ホッブズ、ロックに連なるイギリスの政治思想における重要書目であり、のちに保守主義の源泉と呼ばれるようになった歴史的名著。
著者等紹介
バーク,エドマンド[バーク,エドマンド] [Burke,Edmund]
1729‐1797。イギリスの政治家、政治思想家。アイルランドのダブリン生まれ。1750年、法律を学ぶためロンドンに出るが、ほどなく断念。28歳で出した『崇高と美の観念の起源に関する哲学的考察』(1757年)が高く評価され、文筆家として活動する。1765年、下院議員に選出される。その後約30年にわたりホイッグ党で指導的立場に立ち活躍する
二木麻里[フタキマリ]
翻訳者。上智大学外国語学部卒。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。メディア社会思想論、芸術批評(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
50
レビューを読むと、思想書として読んでいる読者と、歴史書としてよんでいる読者がいて興味深い。有用な情報だけが書かれている訳ではない。大半は冗長な繰り返しや現在では些細と思える情報とその考察なので、あえて全てを読む理由は本書が古典だからという他ない。保守主義とは固陋で全く変わらないということではない。少しずつ変えていこうという漸進主義のことだ。「伝統とは違う」というのは伝統主義ではない。その時代によって変わっていった様がまさに伝統なのだから。本書では革命でリセットすると副作用が大きいので、効果的に変わるために2023/10/17
molysk
43
エドマンド・バークは、18世紀イギリスの政治家、思想家。本書は、進行中のフランス革命を批判する書簡を元に執筆。バークが理想とする政治とは、いま在るものに必要な変更を加えてよく活かすことであり、社会に破壊と転覆を引き起こしているフランス革命は破滅的な結末を迎えると予見した。バークの主張は、時を経て磨かれてきた価値を尊重するイギリス経験論の流れで、良質な保守思想ともいえる。過去の蓄積を放棄して、新しい原理を基に社会を再構築せんとするフランス革命は、大陸合理論の系譜に連なり、両者の対立は必然の流れであった。2021/03/27
かわうそ
41
バークは伝統を盲信しろと言っている訳では無いことに注意が必要だ。『各人のなかにある理性の蓄えなどそう多いものではない』189 のであるから『自分の叡智には全幅の信頼をいだく』190ことに警鐘を鳴らしているのです。 彼は伝統(もちろんそこには理性が含まれていることが前提だ)つまりは先入観に習慣によって愛が生じるということ、それによって『自然本性の一部』になることが重要であると強調しているのです。であるから、バークが伝統を必ずしも全肯定しているということはないと言えるだろう。2024/09/23
かわうそ
41
保守とは決して現状維持ではなくて 安易に伝統や尊重されてきたものを破壊せずに今あるものをよく活かしながら改革すべきものは改革するという立場である。バークは人間の理性の全能性を否定しながら、祖先の理性が追認してきたものを尊重すべきであるということを言っているのです。というのも、一世代の理性というのは儚いものなのだから何世代も容認され続けて残っている理性の蓄積の結果としての祖先の資本というのは良きものであるとみなして さそして、それを必要に従ってその都度、リフォームしていくこれが保守のあるべき姿であるのだ。2022/05/02
Aminadab
29
イギリスの一国会議員の時事論考。1790年11月刊行だから、前年10月のヴェルサイユ行進あたりで、あっこれはダメだと悟ってしまい、どこがどうダメかを一気呵成に筆にした。まず、目下のフランスの革命はわが名誉革命と同根なので応援すべきだという論調を鎧袖一触でしりぞけ、国民議会政権の政策を司法・軍事・財政と各論的にダメ出ししていく。読み味は保守主義の大古典というより、最近の英米論壇の2024年にトランプを選んじゃダメだよという論説記事に近い。予備知識に自信のない人はナポレオンの登場を予言した12章だけ読むべし。2023/09/27