内容説明
本書は、トリックが先か、シチュエーションが先か、その発想の原点を探るための手がかりであり、横溝流探偵小説の骨格部分を、より明確な形で把握するための指標ともなる傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kouro-hou
16
「金田一耕助の帰還」とセットの金田一モノ長篇探偵小説の原型短篇集。雑誌等で発表した読み切りを後に長篇連載作品に改訂しているケースが多く、また短篇と長編間が1年程度のモノもあり、今よりおおらかな時代だったのかも。話の導入部分やメイントリックはほぼ共通、そこからどう話を膨らませていくのか、長短篇あわせて読むとその手法をわかって面白い。最後が駆け足どころか証拠をみつけたらワープで解決等ぶった切り気味の話も多いが、冗長な長編よりもソリッドで面白いかも。本来はマニア向けの本ですが、横溝初心者でも楽しいと思います。2015/04/22
ともひろ
15
冒険に続く短編集。どれも、以前読んだことがあると思われるが、いま読んでも新鮮であります。短編でありながら、事件解決への推理が鮮やかでした。貴重な本です。2016/01/21
いっち〜
10
神保町の古本屋で買った本。金田一耕助ものの短編が7本収録されてるけど、いずれも短い中で連続殺人やら生首・首なし死体等のグロシーンに官能的な描写まであり、なかなかに濃い本だった。事件のトリックや結末も少しひねったものが多く、これは分かりやすく娯楽性が高い江戸川乱歩作品と対照的だと思う。ヒーロー然とした明智小五郎と、飄々としててるけど心中ではめっちゃ怖がり不安がる金田一耕助も良い探偵役の対比。個々の作品では、犯人の動機が意外(というよりやや突飛)な『死神の矢』、入れ替わりトリックの『青蜥蜴』辺りが印象的だった2019/03/07
タリホー
10
金田一耕助シリーズ中、改稿された七作品を収録。収録作のうち三つ(「悪魔の降誕祭」「霧の別荘」「百唇譜」)は改稿後の作品も読んでいるが、改稿前と後で改変要素が多いと感じたのは「悪魔の降誕祭」。それ以外の四つの中で印象深かったのは「青蜥蜴」。被害者の胸元に青蜥蜴の絵図が描かれた理由が面白いと思ったのと同時にややこじつけっぽいと感じられたので、改稿後の作品『夜の黒豹』も読んで確かめてみなければならないと思った。2016/07/26
yuri_azucena
9
「死神の矢」の長編改稿版を入手したので、思い出しがてら再読。それぞれ長編版と比較して、改変や肉付けされている部分を見つけるのも面白い。2019/02/20