内容説明
「殿はいま絹屋の窯にことのほかご執心じゃ」―。近江きっての花形産業となった「湖東焼」は、藩に召し上げられてしまう。部屋住み時代に半兵衛と知り合った井伊直弼は、染付磁器の美しさと、「湖東焼」のために尽力する半兵衛の生き方に強く惹かれていた。時代の波に翻弄される彦根藩と半兵衛の運命は。
著者等紹介
幸田真音[コウダマイン]
1951(昭和26)年、滋賀県生まれ。米国系銀行や証券会社でのディーラーや外国債券セールスを経て、『小説ヘッジファンド』で作家デビュー。国際金融の世界を舞台に、時代を先取りする作品を次々と発表。国債市場の危機的状況を鋭く描く『日本国債』は海外メディアからも注目された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まつうら
44
(上巻の続き)当時は有田や瀬戸のブランド力が強かったので、後発の湖東焼が市場に参入するのは難しかった。絹屋窯の厳しい資金繰りは、いつしか彦根藩への大きな借財となり、そのカタに窯を召し上げられてしまう。借財の担保なのだから窯が召し上げられるのは致し方ない。でも借財はチャラにすべきところ、きっちり返せと言う藩の言い分には納得がいかない。見返りにと申し渡された、湖東焼の販売権と苗字御免は、半兵衛の功労に報いるに足るものなのか? 当時の時代背景を知らないせいかもしれないが、どうにも疑問が残る読後感だ。2023/01/27
zanta
13
48/2/8/2015 やはり半兵衛は魅力的。努力は報われないことはせつない。井伊直弼のことは最期のシーンはよく把握していたが、それ以外は不勉強で、あまり存じ上げなかった。幸田さんの郷里の偉人への深い愛を感じる。大変興味深くおもしろかった。2015/02/08
Totchang
11
単行本のときの題名は「藍色のベンチャー」。これなら経済小説作家としての狙いがわかりやすかったのかとも思いました。しかし、新たにベンチャーとして取り組んだ磁器生産にのみ焦点を当てた小説ではありませんでした。もちろん、歩留まりの問題や白磁の色の問題、技術の進展など磁器に関する変遷も現した上で、江戸末期の経済状況と藩の置かれた位置づけ、近江商人の矜持、井伊直弼の生き様などを見事に表現した作品でした。湖東焼き、ウエブの写真でしか見たことがありませんが、実物を見たいものです。2019/10/25
あひる
4
湖東焼に生涯を賭けた近江商人。井伊直弼の彦根藩主になるまでの数奇な運命。とっても読みごたえのある作品でした。なんといっても半兵衛と留津の夫婦愛には感動です。2014/09/30
カエル氏
4
半兵衛氏と共に召し上げに心が痛み、留津さんと共に半兵衛氏や小兵衛くんの優しさが心に沁みて・・・読後がちょっぴり寂しい。2012/09/26