出版社内容情報
脂濃い料理を好み、歯を磨かず入浴せず、純朴な娘とベッドを共にし、権力への妄執に悩まされる。主治医が綴った"赤い皇帝"の素顔
内容説明
本書では毛沢東の、「一千万人や二千万人の死者など物の数ではない」とか「国内には三千万人の“人民の敵”がおり、中国は人口が多いから、少しくらいいなくなっても余裕たっぷりだ」といった人間軽視の発言が記録されています。
目次
第4部 一九六五―七六年(疑心暗鬼の中で;「君が必要になる時」;「反対者を強くたたけ」 ほか)
第5部 後日譚(苦難は果てしなく)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
25
毛沢東は後半パラノイアに冒され精神的に苦しかったよう。多量の睡眠薬を必要とし、インポテンツでありながら、薬や医師を信じず、若き女性のみ頼りにしていた。欲しい権力を手中にしながら、権力というパワーに振り回されてしまっている感じがした。間違った政策により数千万の命が奪われ、自由を行使できない環境。それに対し主席は性力を振り回す姿が滑稽。4番目の妻、江青と愛人の張玉鳳は毛沢東のそばで権力を得ていく様子も恐ろしい。2016/07/25
Willie the Wildcat
25
最期に垣間見る人間性。静と動。前者が賀子珍、後者が張玉鳳。歪んだ野心と手段との唯一の心のバランスという印象。(幹部は言うまでもなく)国民をも”捨石”とする政治哲学。現代にも通じる各種思想教育と政治的締め付けの根底かもしれない。一方、理想と現実の乖離に苦しむも、健気に主席に尽くす著者。国民の心境の現実描写なのかもしれないと感じる。著者と奥様の陰のない写真の表情が、どこか救いでもある。2014/07/04
活字の旅遊人
14
ごたごたに巻き込まれますよね。そして、出版3か月後に亡くなっている、というのがね。
Koki Miyachi
7
毛沢東の私生活の晩年に近い数年について描かれている。周囲に対する猜疑心、自己中心的に自分の権力を維持しようとする飽くなき欲望には言葉もない。国民を犠牲にすることも厭わない。昨今の中国の利己的な行動、独裁的な習近平の振る舞いも、毛沢東の生き方を知ると決して不思議ではない。筆者命を賭して書き残した本書は、中国という国の閉塞感、エゴイズムを私たちに教えている。今後も語り継がれるべき歴史的な価値がある本だと思う。2017/12/20
アメヲトコ
6
長編の下巻は大躍進の失敗から文革、そして毛の死まで。毛沢東の権力闘争のえげつなさには恐ろしいものを感じます。他書では良識の人として描かれることの多い周恩来も、ここでは毛の完全なイエスマンでマインドコントロールされている印象。著者は本書刊行のわずか3ヶ月後に風呂場で謎の突然死を遂げ、かの国では本書は発禁であるのだとか。本書の話は果たして遠い過去のことであるのでしょうか。2019/02/10