出版社内容情報
"望まれざる存在"として生を享け、堕胎医への道をたどる孤児ホーマーを主人公に、独自の視点で人間の生の営みを描いた傑作長篇
内容説明
セント・クラウズの孤児院で、望まれざる存在として生を享けたホーマー・ウェルズ。孤児院の創設者で医師でもあるラーチは、彼にルールを教えこむ。「人の役に立つ存在になれ」と。だが堕胎に自分を役立てることに反発を感じたホーマーは、ある決断をする―。堕胎を描くことで人間の生と社会を捉えたアーヴィングの傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
57
アーヴィングさんに嵌まり、執筆順に読んでいる。この作品は6作目。アーヴィングさん、またしてもタブー的テーマを取上げる。出産と中絶。生命の誕生とその阻止。出産と堕胎手術を行う孤児院に主人公ホーマーは育つ。もうこの設定で胆捕まれる。なんたってホーマーは生まれながらに母親だった女性にとって望まれざる存在だから。これが問題。深いです。父親的存在の孤児院長ラーチ医師は虐げられた女性の為に堕胎手術を施すんですが、それはホーマーの存在否定になってしまうって訳なんです。上巻はホーマーの成長物語。下巻は如何に。2024/08/13
tom
30
中絶医と養護施設の運営をしているラーチのもとで育つホーマーが主人公。同じ施設で育つメロニィ、彼らと真逆の生活をしているキャンディとウォリー。対照的な世界を描きながら物語は進行する。上巻を読み終えても、どこに進んでいくのか何も見えない。でも、アーヴィングは、平穏であれ悲惨であれ、行くべきところに導いてくれるはず。アーヴィングはすごいな、楽しいなと思いながら読み終えて、下巻に進む。2023/01/27
sakap1173
29
久しぶりの翻訳もの。 孤児、堕胎がテーマなので重いのだけれど、どっぷりアーヴィングの世界に浸かりながら読んでいるところ。 もちろん、すごく読み応えあります。 詳しい感想は下巻にて。 2020/12/07
Small World
27
アーヴィングの本って、どれも長いんですよね〜w。なので、1年に1冊のペースなんですが、読み始めると面白いです! 「ホテルニューハンプシャー」「ガープの世界」に続いて3作品目なのですが、この作品では初っぱなから死の匂いが濃厚な感じがしますね。下巻ではジョン・ベリーやガープのように、いろんなことが起きちゃうのかな・・・2019/09/29
いくら
23
5、6回目の再読です。実際に4年ぶりくらいでしょうか。とにかく自分はラーチが好きなんです。尖っていながら愛情深く、愛する者が戦争に行かないように工作するのですが、それは『オウエンのために祈りを』にも通じるものがあるのですが、盲目的でありながらでもしっかり自分の一番大事なものを守り抜く精神に心が揺さぶられるのです。今回読んで再認識するのは章末の文章の秀逸さです。ラーチとホーマーが風を感じてそう遠くない自分の将来に想いを馳せる場面にもこの物語の物凄い潜在能力を感じる。2013/10/03
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