内容説明
近代文明の病理について真剣に考察するロンドン留学がなかったならば、作家漱石は生まれようもなかっただろう。同様に帰国直前にスコットランドを訪れることがなければ、名作『草枕』は生まれてこなかったかもしれない。―漱石が北の大地に見たものは何か。その足跡に重ね合わせるようにして、著者のスコットランドへの旅が始まる。
目次
1 ヒトロクリの谷
2 漱石とスコットランド(エディンバラに留学したかも知れなかった漱石;「マクベス」と漱石;シングルモルトを飲んだ?漱石;スコットランド人の恩師マードック;メンデルスゾーンと漱石のニアミス)
著者等紹介
多胡吉郎[タゴキチロウ]
1956年、東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。日本放送協会(NHK)に入局後、ディレクター、プロデューサーとして、主に文化・教養系のドキュメンタリー番組を手がける。ロンドン勤務を経て2002年に独立、フリーの文筆家となる
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感想・レビュー
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ろくせい@やまもとかねよし
97
1902年の秋、ロンドンで留学中の夏目漱石さんがスコットランドのピトロクリを訪ねた。漱石さんのスコットランドで体験を探しに、著者がスコットランドを訪ねた取材レポート。キリクランキー古戦場を訪ねる決心で潰える漱石さんのスコットランド旅行を、「草枕」の英訳にある「不人情」=「detachment」を手掛かりに、独自の解釈で想像する。また、漱石さんに影響与えた3名のスコットランド人、大学在籍時の恩師ジェームズ・マードックさんとJM・ディクソン、スコットランド旅行での世話役のJH・ディクソンも紹介。2019/06/11
左近
0
今までさほど注目を浴びていなかった、夏目漱石とスコットランドの関わりについて考察。確かに、英国留学時代の漱石と言えば、雨のリージェンツ・パークで乾パンを囓る、神経衰弱のイメージしかなかった(笑)。予め著者も断っているように、多分に想像も交えながらではあるが、そのロマンを楽しめば良いと思います。『永日小品』と『倫敦塔』を再読したくなった。そう言えば、時期が被ることから、シャーロック・ホームズと漱石を“共演”させる作品が、日本では何冊か書かれているけど、実際には、漱石がホームズを読んだ記録は無いんですよね…2016/02/17
うさぎ
0
夏目漱石がシェリーの詩やオフィーリアの絵に惹かれていたのは知らず、卒論にシェリーを選び、一番好きな絵がオフィーリア夏目漱石私としては嬉しかったのでした。2014/11/24
くにお
0
漱石はロンドン留学の終わりに実はスコットランドのPitlochryという谷間の村に数日滞在している。今はダンダーラックハウスというホテルになっているところにいる館にディクソンという人物を訪ねていった。ここでの経験が『草枕』の世界観に重要なインスピレーションを与えていると言われている。本書は漱石とスコットランドとの以外にも密な関わりを紹介するとともに、漱石のピトロクリ滞在の数日間を著者の妄想でやや小説風に再現してあったりする。
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- 和書
- 夜の記憶 文春文庫